「おーい、霧野ー。ミーティング始めるぞー」
「あー、今行く」

俺が文芸部に入部してから一年が経った。一年の頃、やりたいことがなかった俺は一乃に誘われてこの部に入部した。初めは本を読むだけかと読書があまり好きではなかった俺は内心後悔していた。しかし、部室と図書室に通い続けていると俺は本を読むことに楽しさを感じていた。おかげで読書感想文はスラスラ書けるようになったし、小説を趣味で書くようになった。

「さっきさ、ギター背負った一年とぶつかったんだけどさー、軽音部ってまだあったんだな」
「音楽棟は音楽部で占領されてるもんなー。まぁ、珍しいよな」

幼なじみである神童も音楽部の部員である。そういえば、中学上がってから疎遠になってしまった。俺も神童も部活で忙しいから仕方がないことだが…

「なんか、寂しいよなぁ」
「ん?何がだ?」

何でもない、と言って俺達は図書室のドアを開けた。












「霧野ー、お前さ…偶にはこういうのも読んでみろよ」
「ん?…げ、恋愛モノかよ…」

一乃から渡された一冊の本…明らかに恋愛小説だった。本の裏表を交互に見ながらペラリと適当にページを開いた。

「……女子が読んでる携帯小説ではないんだな」
「あぁ、因みに俺はあれを本だとは認めない」
「同意」

苦笑しながら適当に読み流してみる。うん、甘ったるい恋物語ではなさそうだ多分。でも、読む気にはならない。

「どうせくっついてキスしてエンドだろ?つまらないな。まぁ、作中でナチュラルにエロい場面が書かれてるよりは断然マシだけどな」
「霧野、まだ引きずってるんだな…」

入学して初めて図書室で本を借りた時の話だ。綺麗な青空の表紙に惹かれて借りた本。読み始めたものの、最初の4、5ページでいきなりヤり始めたんだ(無理矢理の方。それを読んだ俺は胃の中の物を全て吐き出してしまった。それ以来、俺はそういう類の本は全力で避けるようになった。

「やっぱ俺はミステリー小説とかの方が向いてると思うぞ。恋愛小説とか無理無理」
「うーん、そうか…じゃあこれは?」

差し出されたのは古ぼけた少し薄い本。ペラリと捲るとそこにはびっしりと文字は並んでいなかった。ただ、英文があって隣に日本語訳が書かれているだけだ。そして、張って付けたような手描きの挿絵。

「ポエム…か?」
「そう、当たり。偶にはこういうのも読んで感傷に浸ってみろよ」

そう言い残すと一乃は奥の本棚へと消えた。ポエム…この本は日本人が書いたものではなく、外人が書いたもののようだ。

「ま、読むだけ読んでみるか…」


お節介な一乃に溜め息を吐きながら俺は本を借りるためにカウンターへと向かった。







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