気が付いたら真っ暗だった。
目を開けているはずなのに、真っ暗だった。
きっと部屋の中が暗いだけなのだろうとベッドから起き上がってみるが、自宅のベッドとは違う感触だとそのとき悟った。
ギチッとパイプが軋む音がする。
ここは医療室なのか?という予想にたどり着いたが、部屋に充満する嗅ぎ慣れた匂いでその予想は外れた。
「病院…?」
父さんが勤めている病院だとわかったのだ。でも、どうして俺はこんなとこにいるのだろう?身体に痛みはない。足の捻挫や骨折でもない。じゃあ、何故…?
がちゃりとドアの開く音がした。ペタペタと音するスリッパ。その音で部屋に入ってきたのは父さんだとわかった。家族だから、歩く音で大体誰だかわかる。
「父さん…?」
「なんだ、起きてたのか…」
「父さん、すみませんが電気を付けてくれませんか?」
暗すぎて何も見えないんです
しん、と沈黙。何かいけないことでも言っただろうか?自分で電気も付けられないのか?ってことなのだろうか?
ならば自分で付けに行くしかないと思ってベッドから降りようとすると父さんから少し慌てた声で止められた。
「何をしてるんだ」
「いや、電気を付けに…」
「電気なんて必要ない…!!今は昼だぞ?」
昼?
「しかし、真っ暗…ですよ?」
普通ならぼんやりと見えるはずの自分の手すら見えない
「修也、落ち着いて聞きなさい」
父さんは俺の両肩に手を置き、重い口調で話した。
「修也、お前の目はもう見えないんだ」