「あれ?吹雪は?」
「休みだってさ」
「ふーん、そっか」
あまり追求することなく円堂は自分の席に戻る。アツヤの存在を知ってから数日が経った。今、アイツが吹雪の中にいるのかは不明。だから、士郎が来てないのかもしれない。
「(俺は…どうしたらいいんだ?)」
ちいさい身体に大きな問題を抱えている吹雪…
アツヤの話を聞いた後、俺は吹雪を守りたいと思った
でも、俺は吹雪に何ができるのだろう?
「……。円堂」
「ん?どーした?」
既に席に付いていた円堂に話し掛け、部活を休むと伝えた。
「吹雪の見舞いか?本当仲良いよなーお前ら」
「お前と風丸ほどではないけどな」
「だって俺ら幼なじみだから仲良くて当然だろ?小さい頃から一緒なんだからな!!でも、お前と吹雪はまだ話し始めて1ヶ月も経ってないんだせ?そっちの方がすげぇよ!!」
そうか?なんて返すと円堂はそうだぞ!!と元気よく返してくれた。
「吹雪にとって豪炎寺は一番大切な友達かもしれないぞ?よかったなー豪炎寺ー」
「いや、そんなわけないだろ」
「はぁ、…豪炎寺はだめだなー」
「…………」
やれやれと言いたそうな円堂に少しカチンときた。
「相手が何を考えて、何を望んでいるのか少し考えた方がいいぞ。なぁ、豪炎寺…吹雪は今何を考えてる?何を望んでる?」
「俺は吹雪じゃない」
「だーかーらー、考えろって。俺らよりも豪炎寺の方が長く一緒にいるんだから少しくらい…ほんの少しくらい、あいつが考えてること…わかるだろ?」
そんなこと言われても…
俺は考えたが、わからない。意識してそんなこと考えたことがなかったからだ。いつも無意識にかつ、直感的に考えていたからだろう。
「じゃあ、豪炎寺はどうだ?吹雪に対してどんな気持ちを持ってるんだ?」
「…それは俺の気持ちであって、吹雪が同じこと考えてるはずないだろ?」
「そこは開き直ってさ、割り切って考えようぜ」
円堂はずっとそんな生き方をしてきたのだろう。だから、誰よりも強いかもしれない。
「俺は…吹雪に会いたい。会っていつもの日常に戻りたい」
「あぁ!!吹雪もきっとそうさ!!」
にかっと円堂が笑ったと思うと、胸ぐらを掴まれて、ずるずると教室のドアまで引きずられてぽいっと放り出される。
「な?!」
「今から行ってこいよ!先生には俺が上手く誤魔化しとくからさ」
「……すまん、円堂」
「ラーメン一つなー」
「フッ、全部片付いたら奢ってやるよ」
「へへっ、楽しみにしとくな」
俺は誰もいない廊下を全速力で走り始めた。
「行ったか…」
「あぁ、やっとだ。本当、豪炎寺って自分の気持ちにも鈍感というかなんというか…」
「お前が言うか」
「??」
「まぁいい、上手くやれよ。豪炎寺…」