「ホーリーロード優勝を祝ってー…かんぱーい!!!」
「「「かんぱーい!!!」」」


雷門中のサッカー棟にて、俺達は雷門中のホーリーロード優勝祝いをしていた。ここまで色々なことがあったが、このチームは本当によくやってくれたと思う。心から感謝しているつもりだ。



「円堂、あまり飲み過ぎるなよ」
「大丈夫だって!!俺、ザルだし!!」
「あっ、剣城ー!!そのポテトちょうだい!!」
「なっ…誰が…!!って、狩屋てめぇ!!」
「人を疑うのはよくないよー、剣城クン(笑)」
「狩屋ぁああ!!」
「げっ、霧野先輩…!!」
「悪いな貴志部、騒がしいけど楽しんでいってくれ」
「大丈夫、ありがとうな」
「南沢ー、いつ雷門に戻ってくるド?」
「フッ…まだわからないな、月山国光も俺の居場所だしな」
「まぁ、いつでも戻ってきてくださいよ」
「ちゅーか、肉ばっかじゃん。魚は?」
「言ったら作ってくれるんじゃないでしょうか?」
「壁山ぁああ!!それは俺の分だてめぇえええ!!!」
「ごめんなさいっスぅうううう!!!ばくっ」
「壁山ぁああ!!!それは俺の分!!」
「まぁまぁ、不動に木暮…俺のやるから」
「ヒロトはお酒飲んじゃだめだよ。車で来てるんだから」
「そうだね。残念だなぁ…」
「ヒロトさん!送ってー」
「あ、ズルい狩屋ー!!俺も俺もー」
「お前ら家逆方向だろうが!!」








騒がしいな…



悪くはない、見てて面白いと思うから。でも、只今、俺はボッチだ。隣に吹雪がいたはずだが、まだ気まずいのか…木野や立向居達の料理の手伝いに行ってしまった。そして、吹雪の席の隣には白恋中の雪村豹牙が無表情で皿に盛ってある肉をぱくぱくと食べていた。

「あの中に入らなくていいのか?」

暇だったから話しかけてみた。雪村はじっと俺の方を見ると口の中にあったものを飲み込んで答えてくれた。

「雷門に俺の知り合いはいませんから」

そして、また肉を口の中に放り込んだ。そうか、コイツもボッチか


「本当は俺はそこらへんのコンビニでよかったんですけど、どうしても来てほしいって吹雪先輩に頼まれて…先輩の頼み事だから断れるはずもなく来たんですよ。当本人は誰かさんのせいで厨房に逃げちゃってますけどね」
「………なかなか鋭いなお前…」

別に吹雪が自分から俺の隣の席に来たわけではない。音無が雪村を連れた吹雪をに半強制的に俺の隣に座らせられたんだ。そして、そわそわしだす吹雪…雪村に助けを求めていたみたいだったが、コイツは食べることに集中して吹雪なんて全然見ていなかった。多分、わざとなんだろう。耐えきれなくなった吹雪は『料理の手伝いをしてくる』と言って今現在…

「心配しなくても吹雪先輩はあなたのこと嫌いっていうわけじゃないと思います。ただ、接し方がわからなくなってるだけなんですよ」
「接し方…か?」
「あんなことがあったんです、友達じゃないんだから普通に受け入れ方も違うでしょ?」
「どういうことだ?」
「だから、友達の立場と恋人の立場じゃ受け入れ方が違うんですよ。あなたの友人さんは簡単に受け入れてくれたかもしれませんが、それはただの仲のいい友達だからでしょ?恋人はお互い愛し合ってるからこそ中が深い、特別な存在。だからこそ、その分だけ受け入れるのも難しいんですよ」
「…………」
「まぁ、複雑なだけでお互い分かり合うのはそんなに時間は掛からないと思いますよ。…はぁ、俺何言ってんだか…」

自嘲しだす雪村に俺も自分自身に自嘲する。中学生に論されるなんてな…笑える。

「ほら雪村、野菜も食え」
「あんたは俺の親ですか…」

肉ばっかり乗った皿に数個プチトマトを添える。雪村はぶつぶつ言いながらもそれを食べてくれた。

「…豪炎寺さん」
「どうした?」

自分用のコップ持ち、吹雪の席…俺の隣にと移動した。そして、コップの中の水を見ながら雪村は言った。

「…吹雪先輩はいつも俺を通して誰かを見ているようでした」
「…そうか。心当たりはあるが、それはお前が思う人物と一致するかはわからないな」
「…少しは俺自身を見てくれたっていいのにな…俺はそんなにその人に似ているんでしょうかね?」
「さぁな、吹雪に聞いてみたらどうだ?」

むぅとした仏頂面で雪村が見上げて睨んでくる。あんまり迫力ないな。

「聞けないから悩んでるんですよ…!!聞いたら聞いたで今の関係が崩れそうですし…!!はぁあ…」

溜め息をつきながら雪村はこてんと俺に寄っかかった。少し、懐いてくれたのだろうか?そんなこと思いながらふとテーブルを見ると俺のコップがなかった。アルコール入りのシャンパンが注がれたコップだ。代わりに空になったコップがぽつんと置かれていて、嫌な予感がして再び雪村に視線を戻すと

「ゆ、雪村…?どうした?いきなり黙り込んで…」
「…の…か…ぁっ…!!」
「ん?」









「ふぶき、…しぇんぱいの…バカぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁあああああぁぁぁあああああぁぁぁあああああぁぁぁあああああぁぁぁあああああぁぁぁあああ!!!!!!」
「おい、雪村?!」

顔を真っ赤にしてぼろぼろと大粒の涙を流しながら雪村は泣き出した。泣き上戸確定。

「え、何々?」
「どうしたのアイツ…」
「吹雪さんが何だって?」
「泣いてるけど大丈夫なのか?!」

ざわざわと俺と雪村に視線が注目する。雪村が持っているコップは正しく俺のコップだった。シャンパンを飲んでこうなったと…吹雪を呼んで伝えるべきなんだろうか?



「雪村…!!」

迷っていると吹雪が戻ってきてくれた。吹雪はすぐに雪村の側に行き、大丈夫かい?と声を掛けるが雪村はぶんぶんと子供のように激しく首を左右に振り俺の腕にしがみついた。

「…………」
「…………」

びゅぉおおおおと吹雪のような音が聞こえた気がする…吹雪さん、怖いです…

「ゆ、きむら…?豪炎寺君が困ってるよ?腕…離そうか、ね?」
「ふぶきしぇんぱいよりごうえんじしゃんの方がおれを見てくれてるから好き!!!」

…吹雪さん、視線が冷たいです

「…僕がいない間に雪村に手出してたの?君…」
「誰かさんが厨房に逃げて、暇だったからボッチ同志の雪村と話してただけだ。妬いてるのか?」
「そっ…んなわけ…!!」

あるな。顔が真っ赤だ。

「雪村、ほら…離れて?ね?」
「やぁあーーーー!!!!ふぶきしぇんぱいなんて嫌いだぁ!!」
「う、…雪村ぁ…」

今のはかなり傷ついたな、吹雪…

「あんたはおれをうらぎった!!」
「いつの話?!」
「うるさい!!」

そう叫びながら雪村はすぐ側にあったコップの水を吹雪にぶっかけた。…おい、それは俺のコップ…

「ふぶきしぇんぱいはおれの自身のことを一度も見てくれたことない!!おれのプレーがその人のプレーとよく似てるかどうか知りしぇんが、俺は雪村ひょうがです!!それ以外の何者でもない!!」
「…………」
「吹雪、わからないこともないが雪村とちゃんと向き合った方がいいんじゃないか?コイツもそれを望んでる」
「僕は……」




吹雪は大きく息を吸ったかと思うと、大声でこう言った。






「一人は…やだよぉおおおおおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおぉぉぉお!!!!!」
「はぁ?!」
「ゆきむりゃぁ…はなれてよぉ!!ごうえんじくんは僕のだよぉ…!!うぅぅ…」
「いやですよ!!ふぶきしぇんぱいのばーか」
「ごうえんじくん返してよぉ…うわぁあぁああん!!!」



どうしてこうなった?!






唖然としながら吹雪と雪村のやりとりを見ていると、ビールを持って円堂と鬼道がこちらにやってきた。

「おー、久しぶりに吹雪酔ってんなー」
「2年ぶりか…」
「2年ぶり?」

確かに、22歳の時に忘年会で酒を飲んだ記憶はある。そのとき吹雪は少し飲んだだけで夢の世界だったが…

「ゆきむりゃぁー!!泣くぞ?!僕泣くぞ!?」
「いい大人がにゃにしてんですかばーか!!」
「アルコールかぶっただけでこんな風になるか?普通…」

ぎゃんぎゃんと揉めている二人に揺すられながらも二人に助けを求めたが『豪炎寺ってばモテモテだなっ』と言われ、バッサリ流された。そして、円堂はそのまま天馬達のところに突進しに行ってしまった。

「なぁ、鬼道。2年ぶりってどういうことだ?」

さっきの言葉が引っかかり、側にいた鬼道に問いた。

「お前が行方不明になった後、吹雪は酒を飲んでも酔わなくなっていたんだ。何故かわかるだろう?」
「…俺のせい…なんだろう?」
「だろうな。豪炎寺修也の行方不明は吹雪に予想以上のダメージを与えたということになる。…愛されてるな、お前…現在進行形で」
「鬼道、助けてくれ」
「2年分の愛を受け止めろ、豪炎寺」


このあと、口喧嘩で疲れ果てて寝てしまった吹雪と雪村の面倒を俺が見ることになり、解散後は二人を俺の家に泊めたのだった。









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