「なぁ」
「ん、どうしたんだ?」
部活が終わったサッカー部の部室にて、ユニホームから制服に着替えて荷物をまとめている時、ふと円堂が切り出した。
「これさ、吹雪のだよな?」
円堂の手の中にあったのは家の鍵だった。それは雪の結晶のストラップやまりものコスプレをしたキャラクターのストラップやらがついていて誰の物かなんて一目で見ればわかる。
「吹雪…のだな」
「なんで部室にあるんだ?今日は吹雪、部室入ってないだろ?」
風丸の問いかけに円堂は答えずらそうに視線を逸らし、そして口ごもりながら
「俺の…バックの中に入ってた…」
「「「なんで?!」」」
2年全員で一斉にツッコんだら円堂はしょげた。
「俺だってわかんねぇよぉ!!だって、何故か入ったんだよぉ!!」
ぎゃんぎゃん弁解しながら一年に突進していく。やめろ。
「それにしても、これ今すぐ届けに行かなきゃヤバくないか?家の鍵だろ?吹雪、今頃家に入れなくて困ってるんじゃないか?」
そう言うと円堂はサーと青くなった。責任感の強い円堂はかなり責任を感じているようだ。
「どうしよう!!吹雪が…吹雪が…!!」
「落ち着け、鍵は俺が届けるから安心しろ」
特に用は無かったが、HR後そのまま風丸と部室の鍵を取りに行ったから吹雪の顔を見ていない。…それだけのためにか?!俺!!
「…どうしたんだ?豪炎寺」
「いや、なんでもない…」
どうしてこんなに吹雪に会いたいのか自分でもよくわからなかった。とりあえず、うるさい心音が止んでくれるのを待った。
「吹雪の家は…確かこのへん…」
数える位しか吹雪の家に行ったことない俺は、自分の記憶を頼りに吹雪の家へと向かっていた。見覚えのある道をひたすら進み、なんとなく…もうすぐだろうと感じた時、男の罵声や叫び声が聞こえてきた。
「…なっ…」
曲がり角を曲がって見た光景に俺は絶句した。
「…はぁ、はぁ……」
「吹雪…」
ボロボロになった吹雪が沢山の不良を殴っているところを…
「吹雪…?」
俺の口から出る言葉は『吹雪』のみ。いつの間にか二回も口にしていた。吹雪はゆっくりと振り向いて冷め切った光のない瞳で俺の姿を映した。俺がここにいることに驚いたのか、吹雪は目を見開き信じられないというような表情をした。
「豪炎寺…くん…?」
「ふぶ……っ?!」
吹雪の背後にいた不良が鉄パイプを振り上げた。そんなことしたら…!!
「逃げろ!!吹雪!!!」
「…っ?!」
オレンジ色になった道路に鈍い音が響き渡った