「はぁ…」
今日はバレンタインデー。女の子が男の子にチョコを渡して告白する日。
「…どうしよう、これ…」
勿論、僕は沢山女の子からもらった。目が痛いほどのピンクやら赤やらでラッピングされたかわいいチョコレートを。
でも、僕が処理に困っているのはこれらではない。
「チョコを渡したいなんて初めて思ったよ」
そう、自分が持ってきたチョコだ。ちゃんと心を込めて作った手作りチョコレート。味の保証はしないけど。
「まぁ、うん。よく考えたら彼って甘いもの苦手だし、僕が贈らなくたって女の子から沢山もらってるだろうし」
ていうか、その彼に女の子がチョコを贈りながら告白している現場を見ちゃったんだけどね
「一緒に帰ろう」って誘いに行ったらあれだもんね。タイミングが悪すぎだ。
かなり動揺した僕は無我夢中に走って気づいたら屋上にいた。
「…ばーか」
悪態を吐きながら自分が用意したチョコレートの袋を破る。そして、ぽいっとトリュフ(的なもの)を一粒口の中に放り込んだ。
「…んー、まずまず…かな?」
美味しくはない、でも不味くもない
ただの甘いチョコレートだ
「君なんて知らないよ」
「何怒ってるんだ?」
「自覚がないなんて最低だね」
「俺が悪かった、すまん」
いつの間にか隣にいた彼に悪態を吐きながらチョコレートを食べていく。残り3粒。
「チョコ…貰ったんでしょ?告白と一緒に」
「そういうお前もだろ?」
「僕は行ってない」
「最低だな」
「君さえいればいいんだよ、僕は。…でも」
わかってる、これは嫉妬なんだ。すごく醜いな。
「俺はお前が一番だ。告白だって断った。だから、そう拗ねるな」
「………」
「チョコ、くれないのか?」
「あげない。君なんてココアで十分だ」
「じゃあ、奢ってもらおうかな」
あげないなんて嘘。もう怒ってないよ。素直になれないだけなんだ。残り2粒の僕の想いの欠片。
さて、いつ渡そうか?