「吹雪ーこっちだこっち!」
「ちょ、待ってよー」

あれから2週間経った。豪炎寺君達と行動を共にするようになってなんとなく、皆が僕に気軽に話しかけてくれるようになった。まだ完全に打ち解けてないけれど、噂で回っている異名も消えかけてきた。

「お前が早く支度しないから遅れそうだぞ吹雪!!」
「えー、僕のせいなの?!」
「他に誰のせいだっていうんだ?」
「早くモーニングコールしない豪炎寺君のせいだよ」
「どうせいつもより早い時間に起こしたってうだうだするくせに」

2週間前の僕からじゃ想像できないくらいの成長だ。今では登校は豪炎寺君と一緒。ちゃんと学校に行くようになったし、この通り普通にコミュニケーションを取れるようになった。

「豪炎寺君、数学でわからないところあったからあとで教えてー」
「いいぞ。その前に、遅刻を免れないとな」

そうだねーと他人事のように返事したら豪炎寺君にペシッと頭を叩かれた。






最近、僕は違和感を感じる






豪炎寺君と一緒にいると、こう…胸がふわふわするんだ。




円堂君や鬼道君と一緒にいるときはそんなことないのに、彼と一緒にいるときだけ…





「…なんなんだろうねぇ?」
「何がだ?」

無意識に胸を押さえながらぽろりと呟いていたようだ。豪炎寺君は不思議そうに僕の顔を見ていた。

「いやー、なんでもないよ。豪炎寺君、前みて走らないと転ぶよー」
「お前も走ることに集中したほうがいいぞ?吹雪の場合は電柱とかにぶつかりそうだけど」
「あはは、そんなことないよ」





とりあえず、僕はこの生活にとても満足している。幸せというのはこういうことなのか。











「吹雪、今日はサッカー見ていかないのか?」

放課後、円堂君は僕の席まで来てそう聞いた。最近、僕は豪炎寺君達の部活が終わるまで待っている。うん、何故なら一緒に帰りたいから…だ。でも、今日は

「ごめんね、今日は買い物が…」
「そっかー、じゃあ皆に伝えとくなー」
「うん、ありがとう」

お礼を言うと、いいっていいってーと言いながら円堂君はバックを提げて教室から出て行ってしまった。豪炎寺君は…確か風丸君と一緒に鍵を貰いに先に部室に向かったんだっけ?

「『じゃあね』って言いたかったな…」



ぽろりと呟いた言葉に『乙女か…』とツッコミ、僕は教室を後にした。












「…買いすぎたかな?」

三つの大きく膨らんだビニール袋を提げながら僕は自宅へと向かった。大体今の時刻は7時くらいだろう。辺りは薄暗くなっている。

「早く帰らなきゃ…」

呟きながらも足を速める。こういう時って嫌な予感がするんだよね。そう、例えば最近無縁だった不良と遭遇したりとか…






「よぉ…、久しぶりだなぁ…吹雪くぅーん?」


ふと前方を見たら僕の目の前には沢山の不良達が道を塞いでいた。



「え、…嘘でしょ…」







今日、卵買ったのに…










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