「お、おはようございます…」
「…………え?」

よくやった僕。今日は自分を褒めてやりたい。一限目のチャイムが鳴る前に登校できたなんて久しぶりなんじゃないか?

ドアを開けっ放しにしたまんま息を切らして立ち続けてる僕を見て先生はよく状況わかっていないようだ。

「はぁっ…はぁ、…ぁ」
「………」

ふと教室を見渡すと豪炎寺君と目が合った。すると、堅物の彼じゃ信じられないくらい綺麗に微笑んだのだ。

「……ん」
「………」

こっちもどうだと言わんばかりの顔をしてやったら、綺麗に微笑んだまま左手をひらひらと小さく振ってくれた。…そこは親指を突き出すとこなんじゃないの?












「よくやった。偉いぞ吹雪」
「うん、もっと褒めていいよ。一限目開始までの20分間で全部終わらせた僕をもっと褒めるべきだ君は」

休み時間、豪炎寺君は僕の机までやってきて朝のことを褒めてくれた。うん、当たり前だ。……あれ?

「…僕、流されてる?」
「あ、吹雪。お前の携番とメアド教えてくれ。もし寝坊したときモーニングコールしてやるから」
「え、いやっ、僕は…」
「ん?どうしたんだ?」

僕は別に友達なんかいらない…僕に関わるな





「……なんでもない」
「そうか、じゃあ赤外線で交換な。俺が送るから」
「うん…」


不思議と心の底から嫌ってわけじゃなかった





「…よしっ、これで完了だな」
「う、うん…ありがとう」

真っ白だったアドレス帳に『豪炎寺修也』という文字が載った。よくわからないむずかゆい気持ちになりながら僕はぱちんと携帯を閉じる。豪炎寺君がまだ携帯をいじっていると誰かがこっちにやってきた。オレンジのヘアーバンドとゴーグルにドレッドヘアーのこの二人…誰だっけ?

「おー?豪炎寺と…吹雪?珍しい組み合わせだなー」
「メアド交換でもしたのか?」
「えと…あの…」

同じクラスなのに『誰ですか?』なんて聞けない。豪炎寺君とのメアド交換で気が緩んでた僕はどう返答すればいいかわからなくなっていた。

「そうなんだ。昨日から俺はコイツのお世話係になったんだ。だからまず初めにメアド交換を…」
「お世話ってなんだよ!!君が自己満でお節介焼いてるだけじゃないか!!」

ハッと我に返るともう遅かった。二人は僕の方をジッと見つめていた。

「いや、今のはその…ちが」
「吹雪ってそんな風に怒るんだな」
「…………………は?」
「なかなか面白いだろ?」
「シカトすると思ってた」
「ふっ、意外と感情豊かなんだな」

え、えぇ?なにこのリアクション…もっと…こう…呆れられるかと思ってた。

「え、あの…ぇえ?」

豪炎寺君に助けてと意を込めてアイコンタクトを送ったら彼は微笑んでクチパクで『頑張れ』っと言った。何を?!どう頑張ればいいさっ…!!

「そうだ!俺達もメアド交換しようぜ!!いいよな?!」
「俺は構わないぞ」
「え、ちょっ…僕は」
「イヤなのか?」

シュンと彼の耳みたいな髪が元気を無くす。心の底からがっかりしたみたいな表情しないでよ…良心が痛むっ…!!

「イヤ…じゃない…。僕なんかで本当に、いいの?」
「お前だから言ってるんだよ。ほら、赤外線通信やろーぜ」
「円堂…お前、赤外線通信を知っていたんだな…」
「馬鹿にすんなー!!」

バタバタと暴れ出す二人を見つめながら豪炎寺君は僕にこう言った。









「騒がしいのもなかなかいいだろ?」



「うん、そうだね…」





何故か、二人のじゃれ合いを見つめる豪炎寺君の微笑みが忘れられなかった。








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