「ここまで来れば大丈夫だろ…」
「う、うん…」

やってしまった…

今日は部活がないから職員室を出た後、俺は一人で下校した。急ぐ用事もないから気まぐれで遠回りして帰っていたら曲がり角で何か喧嘩しているような会話が聞こえたんだ。こっそりと様子をうかがってみたら、絡まれているのは雷門中の生徒。その時点で俺は吹雪とはわからず、助け出して顔を見たときに吹雪だと初めて知った。

「とりあえず…入るか?」

そこは俺のマンション。逃げること一心で走っていたらいつの間にか自分家のマンション前。入るか聞いたが、聞いたすぐ後に気づく。


知らない男の家に入るか?普通。



恐らく吹雪は俺がクラスメートとは知らないだろう。俺が知らなかったぐらいだから…と言ってみる。

「……なんで助けたの?別に助けなくてよかったのに」
「俺は質問しているんだが?ちゃんと答えろ。日本語もわからないのかお前は」

嫌らしく「結構です」と敬語で返答。…なんだコイツ腹立つな。

「あんな奴ら…僕一人でも大丈夫だったのに…余計なことするなよ」
「喧嘩したかったのか?なら謝るが、するなら路地裏とか…人が滅多に来ないとこでやれ」
「僕は別に好きで喧嘩してた訳じゃ…」
「じゃあ、助けてよかったじゃないか。なんで文句言われなきゃいけないんだ?」
「っ…!!!なんで僕の事情に君が首を突っ込む必要があるんだよ!!余計なお世話だ!!僕にもう二度と関わらないで!!」


くるりと後ろを向き、吹雪は走り出した。


『二度と関わるな』…か…



俺は吹雪の後を追い、マフラーをひっつかんでスパンっと思いっきり吹雪の頭を叩いた。

「いっ…!?な、何するんだよ!!」

勢い良く振り返り、俺を見上げて涙目で睨む。全然怖くない。

「こんなんだから友達できないんだぞ…チビ」
「う、うるさいな!!!てか、チビって言うな!!!」
「不器用なくせに意地張るからややこしいことになるんだよ…チビ」
「チビ言うなぁあああああ!!!」

殴られそうだったから吹雪の頭を片手で抑えて制止。腕の長さが違うから吹雪の手は俺の顔…肩すら届かない。

「離せぇえええ…!!!」
「はぁ…ガキかお前は…」

ぱっと手を離すと吹雪は俺を睨み付けた。…なんか、子犬を苛めてるような気分だ。

「独りが好きなら俺はもうお前に接触したりしない。でも、独りが嫌なら学級委員長として俺はお前に友人ができるまで一緒にいてやる…どうする?」
「………」

吹雪はうなだれように下を向いてしまった。そして、










「独りが好きな人間なんて……いないっっ!!!!!」

そう叫ぶと踵を翻し猛ダッシュで俺の元から去ってしまった。




「とりあえず…友人は欲しいってことでいいのか?」


これが、吹雪との学校生活の始まりだった。











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