「なぁなぁ、吹雪また遅刻だったなー。すっげーよな、あんな堂々と挨拶して入ってくるなんてさー」

休憩時間、ちょこちょこと俺の席までやってきたのは円堂と半田。ん?ていうか…

「…ふぶき?」
「ほら、さっき遅刻して途中で学校来たやつだよ。ちっこくて銀髪のマフラーした…」

半田の説明により、さっきの出来事を思い出す。あー…あいつが


「ていうか、豪炎寺…お前学級委員長なのにクラスメートの名前覚えてなかったのかよ…」
「あまり学校に来ないじゃないか。そんな奴のことなんて覚えられない」
「頭いいくせに…」
「人の名前、覚えるの苦手なんだよ」

正直、半田のことも覚えるのに時間がかかった。普通すぎて存在を忘れてしまう…なんて言ったら怒るな。確実に。


「吹雪…か」
「吹雪って変な奴だよな。ふわふわしてるっていうか、なんというか…でも、実際に絡むとちゃんと地面に足ついてるんだよな」
「うーん…意味分からないぞ円堂…」
「んー、俺もわからない」
「「おい」」

円堂に二人で突っ込むとひょっこりと円堂の隣から風丸が現れた。

「何の話をしてるんだ?」
「あ、風丸ー!」
「吹雪の話だよ。あいつ、変な奴だよなーって…」
「あー…あいつ、色々変な噂があるよな。『吹雪の微笑みは不幸を呼ぶ』とか『王の時間』とかだっけ?…」


『微笑むと不幸を呼ぶ』…?

いつも笑ってるじゃないか。
不幸もくそもあるか。



「よく知ってるな」
「生徒会情報」
「あー結構手伝ってるもんな、お前」


そんな会話の直ぐ後に4限目の始まりを告げるチャイムが鳴り響き、ここでお開きとなった。





「(吹雪士郎…)」

4限目の国語の時間に自分にしては珍しく授業そっちのけで吹雪のことについて色々考えていた。


「(半年前に北海道から転校、授業態度や出席日数は悪い…それぐらいしか知らない)」

改めて考えてみると俺は吹雪のことを全く知らない。名前も覚えていないくらいだから当たり前だろう。

「(今になって気になるなんて…馬鹿か俺は)」


とりあえず、俺はあと数十分の授業に集中することにした。

















「は…?」
「いや、だから…学級委員長の君に吹雪君をどうにかして欲しいなぁ…と」
「………」

どうしてこうなった?

俺はただ、頼まれていたプリントを担任に持ってきただけだ。それだけなのに、何故吹雪のことを頼まれるんだ?

「…生徒に押しつけないでください」
「大人が絡んだところでどうにかなるような奴か?あいつは」
「知りませんよ。だったら、俺が絡んだところで何かなるんですか?」

正論をぶつけられ、先生は歯切れが悪くなる。

「人は独りでは生きられない。お前が手を差し伸べてやってくれ」
「一匹狼貫いてるあいつにとって、それはお節介だと思いますが?」
「不器用なやつもいるんだ、お前みたいにな」
「………失礼します」

一礼して俺は職員室を後にした。











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