no title


2014/09/24 16:29
大学に入学して数日経った。授業環境が変わったことにより、前の学校より騒がしくなった授業前。指定された席がないだけでこんなにも変わってしまうのか、そう思いながら僕は昨日から読み始めた本に目をやった。
僕は一番前のドアに一番近いところに座っている。ここが一番便利だからだ。黒板は見えやすいし入口からも近いからすぐに出て行くことができる。そろそろ教師が来るから本を閉じよう、そう思ってちらりと時計を見ると講義開始時刻からすでに20分も経過していた。教壇に視線を移動させても教師らしき人はいない。周りも教師が遅刻していることに騒ぎ始めていた。休校でもないのにまだ来ていない…何かあったのだろうか?しかし、僕の中での顔を知らない教師の心配は一瞬で『来ないのなら本を読み進めておこう』そう結論付けて再び本を開いた。本を開いてすぐに後ろから声が聞こえた

『おい、そこのチビ。お前探して来いよ』
「………は?」

かなり後ろに座っている金髪の青年。如何にもプライドが高そうな印象がある。僕は不機嫌さを出しながら振り返り睨み付けた。

『何で僕が?』
『お前ドアから一番近いじゃん。行って来いよ。お前みたいながり勉な奴は早く講義受けたいんじゃねーの?』
「なにこのひと…」
『あ?英語で話せよ。なぁ、行ってこいよー頼むからー』
「自分で行けばいいのに……『わかったよ』

度々日本語を挟みながら僕は渋々教室から出て研究室に向かった。が、先生の名前を知らなかった僕。急いで掲示板に貼られている授業表を確認して名前を確認。教室も合ってるし休校届けも貼られていない。そして、英語で書かれている教師の名前を確認した。

「……ヒ、ロト…キラ……。きらひろと?」

日本人?海外の学校なのに日本人の教師?とりあえず、僕はキラ先生の研究室へ向かうことにした。しかし、色々な教師に訪ねてやっとたどり着いた研究室には誰もいなかった。まさかと思って全速力で教室に戻ってみてもまだ来ていない。再び捜索に駆り出され、仕方なく教務課に行って先生のことを尋ねても苦笑いで『休みの連絡は来てませんね。あの人のことだから寝坊ってことはないと思いますけど』と言われた。
僕は早歩きで再び教室へ戻る。ていうか、なんでこんなこと僕がしなくちゃいけないんだ?時間の無駄じゃないか。苛々のせいで足取りが早くなる。近道しようとふだんは使わない芝生広場の道を歩いていると木の根元の所に人が寝っ転がっていた。誰もいないこんなところで何をしているのだろう?僕は何となく其方に視線を向けるとどことなく親近感を感じる顔付きをしていた。ここの生徒かな?そう思ってゆっくりと近付く。

『すみません』
『んんー…なにかな僕?…ん?日本人?』
「あ、はい。そうです」

寝っ転がっていた人が日本人だとわかると自然と日本語で話し始めた。むくりと起き上がった彼はにっこりと僕に笑いかけた。人当たりの良さそうな人だな、それが第一印象。

「小学生がこんな所でどうしたの?迷子?」
「いや、僕は人を探してて…」
「へー、だれだれ?良ければ俺も探してあげるよ」
「えーと『キラヒロト』っていう人なんですけど…」

ピシッと彼の笑顔が固まった気がした。そして、勢い良くたちあがると鞄を持って全速力で走りだした。僕はいきなりのことで一瞬反応が遅れてしまった。そして、僕も全速力で追い掛けた。あの人、絶対何か知ってる!!

「ちょ、ま、待って下さい!!」
「あはははははは君、小学生かと思ったから油断してたよあっはっはっはっ!!」
「絶対何か知ってるんでしょ?!さっさと教えて下さい!!」
「残念っ!断っちゃう!」
「腹立っ…って、あぁ?!」

さっきからキャンパス中を駆け回ってたせいで体力に限界がきたようだ。僕は失速していき、あの人は走り去ってしまった。
仕方がないが、先生の捜索は諦めて教室戻ろう。疲れたから歩いて校舎まで戻り、教室の扉を開けると既に授業が始まっていた。すれ違うという予想が的中してしまい、頭が痛くなった。とにかく、先生に謝ろうとよくよく顔を見てみると

「さっきの赤毛の日本人の人…」
『遅かったねー☆もうオリエンテーション終わっちゃったから、えーと…吹雪くんは今日中に俺のところまで来てねー』
「え」
「よろしくぅ!」
「えええええぇえええええッ?!」

それが僕とヒロトくんの最悪のファーストコンタクトだった。







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