no title


2014/04/18 22:22
僕が生まれたのは北海道の白恋町。雪に囲まれた世間で言う田舎町。そこで父さんと母さん、弟のアツヤと一緒に暮らしていた。
父さんと母さんは有名な学者で自分達の生まれ故郷である白恋の一年中降り続ける雪について研究していた。そんな家庭の長男として生まれた僕は、二人の血を濃く受け継いでいたみたいで、まだ幼い子供だったのに書斎を弄っては難しい本を引っ張り出して読めもしないそれを見て遊んでいた。
弟のアツヤは、とにかく動き回るのが好きで特にサッカーをして遊んでいた。偶に黙々と本を見ている僕に構って欲しかったのかなんなのか、ボールをぶつけられては大喧嘩に発展したりしてた。

今の僕があるのは、父さんの好奇心で計算ドリルを渡されたのが全ての始まりだった。4歳だった僕はそれをなんなく解いてしまったのだ。誉められるのが嬉しくて、僕は父さんから渡された問題をどんどん解いていった。そのせいで僕は、一つ後悔をすることになった。

『兄ちゃんは、いっつも紙と睨めっこしてるからつまんない』
『アツヤもやってみなよ。これを解いたら父さんにスゴく褒められるんだ』
『……おれと遊ぶより、褒められる方がいいんだ?』
『?、アツヤだって褒められてるだろ?それより、サッカーでエースストライカーを任されたんだって?』
『うん…』
『頑張ってね!今回は僕も父さんと母さんも見に行けるから』
『……うん』


その日の試合の帰り、僕達は雪崩の事故に巻き込まれた。助かったのは僕だけ。三人は雪の下に生き埋めにされた。
僕は、独りぼっちになってしまった。算数の公式が分かってても、難しい漢字が読めても、僕は一人で生きていく術を知らない。心臓が締め付けられるような感情も、その影響で溢れてくる涙もどう対処すればいいか分からない。あの本の主人公はどうしていたか?いや、現実的に考えてその展開はありえない。じゃあ、あの本の人物は?そんなことばかりぐるぐる巡って遠い親戚の人達の話なんて頭に入ってこない。しかし、ハッキリと聞こえた誰かの声

『あなたはどうしたいの?』

僕がやりたいこと…?僕は知りたい。自分の知らないことを全部。そして、こんな気持ちから逃げたい。全部知れば、こんな感情はなくなるから。だから…




『僕は、かんぺきになりたい』





5歳の時、僕は名門校に入学した。僕が親戚の人に手続きだけお願いしたのだ。全寮制の学校に入れば親戚の人達の迷惑は掛けない。学費やその他諸々だって遺産で払えばいい。それに、首席には学費免除の特典付きだ。大丈夫、それくらいの覚悟はできている。
入学後、僕は一心不乱に勉学に励んだ。励んだというよりは、無理矢理知識を頭に詰め込んだ。一度見た物は忘れない体質が初めて憎いと感じたのがこの頃だった。
ずっと勉強していれば、父さん達が死んだ悲しみに浸らなくていい。あれは、現実逃避に近かったかもしれない。
正直言うと、この頃の記憶はあまりない。食う寝る勉学ばかりだったから印象的な記憶がない。いつの間にか飛び級をしていて、いつの間にか大学さえ決めていた。僕は12歳でこの学校を首席で卒業。先生達から薦められたアメリカの大学に入学することになった。今思えば、この大学に入って、あの人に出会えて救われたんだ。僕に知識以外の全てを教えてくれたから。







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