no title


2013/11/15 23:48
8月25日

蜩も参戦した







「わぁああ…っ!!」
「先生大袈裟だなぁ」
「だってだって!僕屋台とか初めてだから…!!焼きトウモロコシ美味しそう!」

僕は今日、雷門町の夏祭りに来ている。教え子達から誘われて夜の屋台にテンション上がりっぱなしの僕。呆れたように笑いながら、皆は僕に沢山のオススメを教えてくれた。
林檎飴、かき氷、焼きトウモロコシにたこ焼き…全部僕にとっては初めての食べ物。

「スゴいねスゴいね!!実際に食べてみると実に興味深い!美味しい!」
「先生落ち着きなよー」
「なんか、大きな子供みたい(笑)」

可愛らしい浴衣を着た阿部さんと河野さんに口元を拭われながら、僕は更に焼きそばを購入。屋台のオジサンから『お兄さんモテモテだねぇ!』と言われたけど、『教え子です』と答えたら一瞬オジサンの表情が固まった気がした。まぁ、気にせず僕は焼きそばを受け取って、その後は食べ歩きながらぐるぐると屋台を回っていった。




「はぐれた…」

打ち上げ花火の開始時間が迫るのと同時に、屋台も賑わってきて僕はつい皆とはぐれてしまった。通り過ぎる人達の目線が痛い。今の僕は左手に三本のイカ焼きと水風船が4つ、右手には焼きそばと金魚、口にはチューペットを咥え、ピカチウというキャラクターのお面を頭に付けた状態だ。全力で祭を楽しむ痛い大人の図が完成してしまっている。
これは、早くみんなと合流しなければ…


「見て見てお兄ちゃん!あの人スゴいよ!4つも水風船持ってる!」
「夕香、はぐれるからちょっと待て…って…」
「あ、豪炎寺くん」

人混みから現れたのは小さな女の子と僕の教え子である豪炎寺くん。豪炎寺くんは僕を見た瞬間、露骨に嫌そうな顔をした。僕も随分苦手視されるようになったなぁ。

「こん、ばんは…」
「うん、こんばんは」
「お兄ちゃん、知り合いの人?」
「…夕香、この人は」
「こんばんは夕香ちゃん。僕は、君のお兄さんの担任の先生で吹雪士郎って言うんだ。よろしくね」

しゃがんで豪炎寺くんの妹さん自己紹介。夕香ちゃんは人懐っこい表情を見せて「夕香だよ!よろしく!」と言った。豪炎寺くんはばつが悪そうに目をそらしたまま。僕は水風船を半分夕香ちゃんにあげて、彼のご機嫌取りをしてみた。

「豪炎寺くん、イカ焼きいる?」
「いりません」
「だろうね」
「分かってるなら聞かないでくださいよ」
「豪炎寺くん、この前無理矢理食事に誘ったのは悪かったと思ってるよ。たかが食事一つで内申を脅し文句にしたりしてごめんね」
「いや、別にそういう訳じゃ…」

突然の僕の謝罪にしどろもどろになる豪炎寺くん。クールな彼にも子供特有の優しいところが見れて少し安心してると夕香ちゃんが豪炎寺くんの服の裾を引っ張った。

「お兄ちゃん、お腹空いちゃった…」
「あ、あぁ、そうか。じゃあ何か買いに…」
「ぼ、僕もついて行っていいかな?!」

ちょっと遠慮気味に手を上げると豪炎寺くんは眉間に皺を寄せた。うん、悪いと思ってるよ。でもさ、僕だって今結構ピンチなんだ。


「み、みんなとはぐれちゃってさ…」


『何してるんだ、この人は』とでも言いたげな顔をして豪炎寺くんは大きな溜め息を吐いた。








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