no title


2013/02/14 21:08
「これはこれは士郎君、君から此方に戻ってきてくれるなんて…明日は槍が降るかもしれませんね」
「あはは、失礼な」

富士山麓の別荘にて、僕はお盆ということで実家(仮)に帰郷していた。何が『君から戻ってきてくれるなんて』だ。全部仕組んでいた癖に。

「で、僕に何か用なんですか?基山君まで使って僕を脅しといて」
「脅すなんて、そんなことしたつもりはありませんよ」
「どうだか、基山君に僕の教え子と接触までさせて…汚いですね」
「さぁ?知りませんね」
「……もう、いいです。では、本題に入りましょうか」

この人はズルい人だ。何でも自分の思い通りにいくと思っている。この世の中はそんなに甘くないのに。でも、こんなどうでもいいことで問い詰め、責めても意味がない。もうすでに過去のことなのだから。

「僕を帰郷させた理由は?」
「お盆だからですよ」
「愚答ですね。なら、基山君でも呼べばよかったじゃないですか」
「一応、ヒロトも帰ってきています。しかし、私は君とお盆を過ごしたいのでね。それに、私はヒロトより君を評価している」
「この話に評価は関係ないですよね?お盆なら自分の息子と過ごすべきだ」
「しかし、君も私の…」

ガンッと思いっきり畳を叩いて言葉を遮った。ダメだ、この人といると怒りしか沸いてこない。なんて最低な人間なんだ。基山君の気持ちを踏みにじるような答え…気に入らない!!この人の全部が気に入らない!!

「僕は、貴方と家族になった覚えはありません。帰ります」
「そうですか。では、また年末に帰ってきて下さいね」
「………」

パタンと襖を閉めて、薄暗い廊下を歩く。玄関、どっちだっけ?

「同情のつもりかい?」
「…あ、基山君」

腕を組んで壁にもたれ掛かっている基山君と遭遇。さっきの会話、聞かれていたのか。盗み聞きして傷付いたパターンかな?

「うん、同情だよ。でも、僕は君のこと好きじゃない」
「知ってる。俺も貴方のこと好きじゃない」

沈黙。基山君は僕のことを憎んでいる。大切な父親を取られてしまったと思っている。僕はあの人のことなんて眼中にないのに。

「玄関はあっちだよ」
「ん?あぁ、ありがとう。叔父さん」
「…俺、貴方より年下なんだけど…」
「本当の事だろ?だから、君は僕にタメ口で話してる」
「そうだけど、その呼び方はやめてください」
「はいはい」

じゃあね、と言って基山君と別れた。僕が基山君を好かない理由、それは…







「気持ち悪い…」


からだ。







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