no title


2013/02/12 22:29
「明日か…ラグナロクは…」

エルドラドの練習コートにて、俺は一人佇んでいた。監督を上手く勤めることができるか心配なのだ。一応聖堂山の監督をしていたが、殆どは鷺沼に任せっぱなしだった。そして、俺のチームは天馬をキャプテンとしたチームだ。本来ならこのチームの監督は円堂の方が相応しいが、今はそんな事を言ってる暇はない。円堂を取り戻すため、世界を救うために明日の試合は何としても勝たなくては。



「こんにちは、お兄さん」



後ろから発した聞き覚えのない声に咄嗟に振り向いた。目の前には真っ白な少年。これでもかと思うほど跳ねた真っ白な髪と小さな眉毛、大きくて黄色い垂れた目。ふと、吹雪を思い出させるような、そんな容姿をした少年だった。

「君は…?」
「待ちきれなくてさ、挨拶に来ちゃった」
「待ち…?まさか、セカンドステージチルドレン…?!」

何故此処に?エルドラドの防衛システムは完璧なはず。侵入者なんて有り得ないとそう教えられていたが…

「僕らにそんなの効かないよ。お兄さん、超能力って知ってるかい?」
「………」
「あれ?だんまり?大丈夫だよ、心配しないで。別にお兄さんに危害を与えるつもりはないよ。ただ、お話ししたくてさ」
「話だと…?」
「うん。あ、ザット君もおいでよ。三人で色々話し合おうよ」

まるで携帯を通じて話すかのように白い少年は呼びかけた。おそらく、テレパシーでも使っているのだろう。しばらくすると俺達二人しかいないフィールドに第三者がワープして現れた。その少年も髪が白く、変わったユニホームを着ていた。ゆっくりと開かれた目を見て俺は絶句した。

「っ、?!…俺…?」
「あ、本人でも気付いちゃうんだ。よかったね、ザット君」
「………」

ザットという少年は恐ろしい程、俺と顔が似ていた。あの目つきは完全に中学の時の俺だ。ということは、つまり…

「サルが松風天馬の血縁者と同様、俺も貴方の血縁者だ。豪炎寺修也」
「っ?!」

いきなり暴露された真実に混乱した。俺の子孫がセカンドステージチルドレン…?!なんで、そんな…

「あ、僕の紹介がまだだったね。僕はユウチ。貴方の恋人、吹雪士郎の子孫だよ」
「っ?!!」

吹雪の子孫までもがセカンドステージチルドレンだった。しかし、俺達自身にはセカンドステージチルドレンの覚醒の兆しはなかったはずだ。なのに、何故

「それは、元々君達にはセカンドステージチルドレンになる素質はあったんだ。けれど、前兆が起きる前に君達は大人になってしまった。だから、子孫である僕達にその力が現れたってこと。先祖返りみたいな物だね」
「読心術…」
「うん。だってお兄さん、何にも言わないんだもん。ザット君の無口は遺伝だったんだね」
「……お前達は何を話に来たんだ?このことではないのだろう?」

一瞬きょとんとした表情をしたが、ユウチは再びにこにこと微笑みだした。笑い方が吹雪にそっくりだ。

「お兄さん達が僕達に残した厄介な物について…ね?


時にお兄さん。吹雪さんはまだ恋人なのかな?お互い愛し合ってるのかな?」
「は、?…何言って…」
「吹雪さんはお兄さんのこと凄く愛しているんだろうなぁ。わかるよ、すごくわかる。きっと、貴方のサッカーする姿や微笑む顔がとても好きなんだろうなぁ。本当は頭を撫でられるのも嫌いじゃないんだと思うよ」

まるで吹雪の感情を知っているような口振りだ。セカンドステージチルドレンと言えども、祖先である吹雪の感情を200年後の世界から読み取ることなんて出来るわけがない。じゃあ、どうしてユウチは確信のあるような言い方をするんだ?

「なんでだと思う?わからないよね?お兄さん、今結構混乱してるみたいだしね。正解を教えてあげようか?正解はー、



僕『達』はお兄さん達の恋愛感情という名の未練まで受け継いでしまったからさ!」
「?!!」
「これが俺達の言う『厄介な物』だ」

恋愛感情…。俺が吹雪に対する感情までも奴らにまで受け継がせてしまった?それた未練だと?俺は吹雪を愛していて、吹雪も俺を愛してくれている。何故そこに未練がある?

「未練なんて…」
「あったんだよ。じゃあ質問するけど、僕らの中にあるこの感情は何?ザット君を見てると懐かしくて、愛しい気持ちになる。でも、それは僕の感情ではない。違うんだよ。絶対に」
「…それに、俺達が何故ここに存在するか分かるか?」
「何故って…」

俺達の子孫だから。…待て、まさか

「別れたんだよ、お兄さん達。じゃないと僕達は存在してない。女の穴の中に性欲吐き出して子供を作って一般家庭を築き上げて幸せに暮らして死んだんだよ」
「ユウチ、幸せかどうかは分からないぞ。何故なら、こんなに強い未練が残るはずがない」
「あー、それもそうか」

クスクスと楽しそうに笑うユウチ。俺を睨みつけるザット。


「なんで、俺にこんなことを話したんだ?その話を聞いて歴史が変わるかもしれないんだぞ?」
「うん、それでいいんだよ」

…は?

「僕らは消えても構わない。たった20までしか生きられないんだしね。ただ、他人の感情を持って振り回されながら生きていくのが胸くそ悪いだけ。ほら、お兄さんにこの話をして元の世界に帰った瞬間、僕達の中にあるこの感情が無くなるかもしれないだろ?そこに掛けてるのさ」
「それに貴方は絶対に吹雪士郎と別れる」
「……何故、言い切れる?」

俺と同じ顔をしたザットを睨み付ける。俺は、吹雪と別れるつもりはない。それはこれからもだ。絶対に別れるなんて、他人に断言される筋合いはない。

「いつか絶対にどちらかが疑問に思う。同性愛は肯定される物なのか?幸せな家庭を作るという当たり前なことを自分が奪っているんじゃないか?…と」
「…………」
「天涯孤独の吹雪士郎にとっての幸せは家族と暮らすことなんじゃないか…とな」
「…っ」















「いいのかな、あんなに歴史干渉しちゃって」
「エルドラドの爺さん等もやってたからいいだろう」
「試合、楽しみだな」
「お前のとこのチームがあの人のチームと戦うんだろ?頑張れよ」
「うん!まぁ、監督のメンタルをズタズタにしてやったし…大丈夫だよ!」












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