no title


2013/01/30 22:50
「レディー…ファイッ」
「とぅっ」
「「「瞬殺?!」」」
「何やってるんだ…」

宿福の食堂にて、円堂達が腕相撲をしていた。今は休憩時間でみんなはそれぞれ自室で休んだりしているのだが、俺は丁度喉が渇いて水を飲みに下に降りてきたところだ。腕相撲で遊んでいるメンバーは円堂を始め、立向居、風丸、染岡、ヒロト、綱海、そしてさっきの円堂との勝負で現在死んでいる木暮。

「円堂の奴、すげぇ強いんだぜ」
「立向居も強くてさぁ」
「さすがゴールキーパーだよな」

そうか、と言って水を飲んでさっさと退散しようとしたが、円堂に捕まってしまった。豪炎寺もやろうぜっ、と…
木暮が座っていた席に座らせられて円堂と向かい合わせになる。いや、勝ち目ないだろ。円堂とやると骨折しそうな気がする…。

「豪炎寺?なんで初めから身体倒してるんだ?」
「少しでも、身体の負担が無いようにと…」
「お前負ける前提なんだな!!」

染岡から突っ込まれるが、気にしない。腕じゃなく、脚なら負ける気がしないんだがな。脚相撲?ねぇよ。

「じゃあ、いきますよー…レディー…ファイッ」
「とぅっ!!」
「いって…!!」

思いっきり机に叩きつけられて、ガンッなんて痛々しい音が響いた。手の甲の骨を思いっきり打ったようだ。痛い。

「瞬殺だったな」
「容赦ないなー円堂」
「だせぇな豪炎寺」
「うるさい。ていうか、円堂と立向居はやったのか?ゴールキーパー同士」
「はい!円堂さんが勝ちました!」
「いやぁ、あの勝負が一番白熱したよな!どっちが勝ってもおかしくなかったぜ!」

やっぱり、円堂の方が強いのか。流石だ。さて、俺はそろそろお暇しようか

「どうせならメンバー全員とやろうぜ!!」
「綱海、何故俺の腕を掴む」
「んなもん、海の広さに比べりゃ……いくぞー!」
「おい、最後まで言うのめんどくさいからって途中で切るな!!」
「そんなの海の……最初は鬼道だな!」
「おい!!」

俺は綱海に腕を掴まれたまま、ずるずると引きずられるように食堂を出た。













「皆、立向居君の時点で瞬殺だったね…」
「ていうか、ヒロトも負けたのか?」
「さぁね」

なんだこいつ…

とりあえず、腕相撲巡りは鬼道から始まって佐久間、飛鷹、土方、壁山、虎丸(面白そうだと言って付いてきた)、不動(ヒロトが挑発したらやってくれた。瞬殺だったが)そして、最後に

「吹雪ー!!勝負だー!!」
「ふぇ?!…ぇ、きゃぷてん…?」

あ、完全に日向ぼっこしながら昼寝してたな。自分の部屋にいきなり大人数で押し掛けてきたことに混乱しているようだ。目もとろんとしてるし。

「今、メンバー全員と腕相撲対決してるんだよ。円堂君と立向居君が強いんだ。吹雪君も勝負してくれるかい?」
「うでずもー?…ん、別にいいけど…」

吹雪はノロノロとした動きで壁に立てかけていたテーブルを元に戻した。大丈夫なのか?完全に寝起きなのに力なんて入るのか?何か今にでも寝そうだし…

「吹雪も余裕だろ。コイツ、ナヨナヨしてるし、今は完全に寝ぼけてるしよ」
「ラストなのに呆気なく終わりそうだね」
「じゃあ、俺からですね」

立向居が吹雪と向かい合うように座って腕を机の上に置く。吹雪もゆっくりとした動作で立向居の手を握り、準備万端だ。円堂が握り合っている二人の手に自分の手のひらを添えて、いくぞ、と声を掛けた。

「レディー…ファイッ!」
「っ!……なっ?!」
「…………」


瞬殺、と思っていた。思っていたのだが、


「動か、ないっ…!!」
「…………」

ピクリとも吹雪の腕は動かなかった。あの立向居が動かせないだと…?

「吹雪は…?!」
「なっ、」
「コイツっ…!!」





寝てる…!!







「腕相撲しながら寝るってどんだけだよ!!」
「吹雪さん、完全に頭が下向いてますね」
「寝てるのになんで腕に力入ってるんだよ!!立向居ですら動かせないって…!!」
「あのっ、俺、どうすればいいんですか?」

ガッチリ掴まれてて動けないんですけど…

「……一回起こすか」


吹雪を起こせと風丸に命令されて何故か俺が起こす羽目になった。とりあえず、揺さぶってみたが吹雪は起きなかった。もちもちな頬を引っ張っても起きない。

「じゃあさ、耳に息を吹きかけてみなよ。それがダメなら舐めてみて」
「ヒロト…お前…」

完全に引いている風丸にヒロトは違うよっ、と無駄な弁解をしていた。俺もかなり引いた。とりあえず、舐めるのは止めといて息を吹きかけてみることにした。吹雪の耳に口を近付けて

「ふっ…」
「っーー!!!?」
「あ、起きた」

びくんっと身体を跳ねさせながら吹雪は起きた。なんか、エロい起こし方だな。ヒロトはクスクスと笑っている。お前がやれって言ったんだろ?

「ん、はれ?」
「吹雪さん、手を離してくれますか?」
「ん、ぁ、ごめんねー…」
「吹雪、眠いんならベッドで寝ような」

風丸お母さん降臨。お母さんは吹雪に肩を貸しながらベッドに寝かしつけた。本当に親子みたいだった。すやすやと眠る吹雪を見ながら俺達はさっきの腕相撲について話し始めた。

「吹雪、あんなに強かったんだな」
「予想外だ。あんな細っこいのに」
「でも、吹雪さんって小さいけどシュートは強力ですよね!!」
「吹雪ってこの中じゃ2番目に小さいからなぁ…人は見掛けによらずってやつか」

皆、釈然としない様子だった。俺も自分より小さい奴の方が腕力があると思うと、どうも微妙な気分になる。すると、吹雪の部屋に鬼道が入ってきた。あと10分で練習が始まるから呼びに来たらしい。

「まだやってたのかお前達…」
「ん?あぁ、吹雪で最後だったんだ」
「勝負したのか?」
「したした!!吹雪のやつさ、寝てるのに凄いんだぜ!!立向居が動かせないぐらいの腕力でさぁ!!」
「微動だにしなかったな」
「?、寝ているのに腕相撲したのか?」
「いや、開始と同時に寝てしまったんだ」

ちらりとベッドですやすやと眠っている吹雪を見る。

「ふっ、流石『熊殺し』の異名を持っているだけあるな」
「え、熊殺し?」

一瞬の沈黙の後、円堂、風丸、染岡が何かを思い出したかのように手をたたいた。

「確か、そんな異名もあったな!!」
「まぁ、実際殺してたしな」
「懐かしいな」

何のことだかさっばりな俺達。綱海が何の話だ?と聞くと






「「「吹雪が北海道で熊を殺した話」」」





俺達は一瞬で吹雪のその腕力に納得した。







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