no title


2013/01/09 23:35
7月31日

今日も蝉は煩い




「先生ー!!」
「あ、田平さん。おはよう」
「ちゃんと全部終わりましたよ!!偉いでしょ!!」
「そうだねぇ、えらいえらい!!あ、それぞれのかごの中に宿題入れてね。全部入れ終わったらダ●ツをあげよう」
「わぁい!!」
「先生、」
「ん、あ!豪炎寺君!!」
「こんなところで何してるんですか」


宿題提出日、学校に行くと先生が校門の前で麦藁帽子をかぶって立っていた。








「はい、お疲れ様。ダッ●どーぞ」
「あぁ、どうも」

クーラーボックスのそばにしゃがみ、味を選んでいると首筋に冷たい物を当てられて一瞬息が詰まった。

「先生…」
「えへへ、ガリ●リ君もどうぞ。君には助けられちゃったからね、お礼だよ」
「はぁ、ありがとうございます」

毎回5限目に先生を起こしに行っていることは、先生を助けているということにはならないんだろうな。それもカウントされるならこの人は俺に貸しばかり作ってる。大人気ないことこの上ないな。

「明日から8月だね。豪炎寺君は何か予定とかあるの?」
「俺は部活があるくらいですね。あとは何も」
「サッカー部だっけ?エースストライカーなんでしょ?すごいね」
「………先生は何か予定は?」
「んー、僕?」

バリッと袋を破いて先生から貰ったガリ●リ君を頬張る。ダッツは帰るときに選ぼう。話が長くなりそうだから。

「うーん、椎葉さん達と海行くのと…夏祭り行くの…あと、お盆に呼び出し食らってるぐらいかなぁ…」
「呼び出しって…お盆は実家に帰るもんでしょ?」
「うん、そうなんだけどねー。なんていうか、あそこは実家じゃないし血縁関係なんて一切ない。でも、行かなきゃいけないんだよ」
「………。」

がりっとアイスを噛み砕くと爽やかなソーダの味が口一杯に広がった。吹雪先生の家庭はワケありなようだ。全然追求はしないから、吹雪先生は俺に構わず愚痴る。…愚痴なのか?これは…

「お盆は死者が帰ってくるっていうけど、家がなかったらどうなるのかな?海外で死んだらやっぱり日本に戻ってくるのかな?なんか事故死した死者って死んだ場所にずっといそうなイメージじゃない?僕にはよくわからないや…」
「俺にも、よくわからないです…」

ミーンミーンと蝉が鳴く。煩い。耳が痛い。夏限定の自然のBGMにしてはけたたましい。
吹雪先生はずっと遠くを見たままだった。木に止まった蝉を見ていたのかもしれない。青い空を見ていたのかもしれない。または入道雲。それか、




何か、昔のことを思い出していたのかもしれない。












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