no title


2012/12/27 13:44
「くそっ!リカと音無がさらわれた!!」
「どうするんだ?闇雲に探しても見つかる確率は低いぞ」
「春奈……」
「…………」
「?、吹雪?」

するすると俺の後ろに隠れる吹雪。真面目に話せ、と言いかけた所で俺はコイツの身体が小刻みに震えているのに気がついた。顔も只でさえ色白なのに更に真っ青になっていた。

「どうした?」
「もしかして吹雪さん、雷が怖かったんですか?!」
「……っ!!」

虎丸の言葉に微かに反応を示した吹雪。虎丸はいつものようにニコニコとしながら吹雪の返事を待っている。吹雪は口がうまく回らないようで口をゆっくり開閉するだけだった。

「吹雪さんってば、意外と子供っぽいんですね!!」
「虎丸、コイツにはちゃんと事情があるんだ。からかうな」

ばつの悪そうな顔をした虎丸から視線を逸らし、吹雪と向かい合う。吹雪は相変わらず顔を真っ青にして震えている。

「大丈夫か?結構な至近距離で落ちたもんな。あれは誰だって怖いさ」
「……っ、…っ!!」

こくこくと首を縦に振る吹雪。そのまま吹雪は俺のユニホームの裾をぐいぐいと引っ張って誰もいないコートの端を指差した。とりあえず、二人で話したいのかと思い、足が上手く動かない吹雪を引きずってコートから出た。











「ご、豪炎寺君…!!僕…!!」
「ど、どうした?」
「僕………、雷落ちても発狂しなかったよ!!」
「…は?」

さっきとは反対にきらきらと目を輝かせながら報告してくれた。子供か、子供だけど。

「でも、やっぱり本物は怖いなぁ…。振動とかあるからそこら辺カバーできないかぁ…」
「あー、…そうだな」
「でも、ここまで克服出来たんだよ?!iPodに入ってる雷鳴だけで!!すごいでしょ!!雪崩はまだ駄目だけど、雷鳴なら今年中に克服できるかも…!!」

見えるはずのない尻尾と癖毛の二葉を揺らしながら、褒めてくれと言わんばかりの目で見てくる。くそっ…、抱き締めたい…!!

「が、んばったな…。偉いぞ、吹雪」

ここはグラウンド円堂達がいる、と自分に言い聞かせながら吹雪の頭を撫でた。ふわふわした癖っ毛が手に触れると何となく、綿菓子が過ぎった。吹雪はと言うと、気持ちよさそうにされるがままに頭を撫でられていた。喉でも鳴りそうだな、狼だけど

「これで一歩前進だ」
「早く来いよ」
「勢い余って追い越しちゃうかも」
「ふっ、かもな」
「え?」
「だって、吹雪はもう一人で歩けるからな」





吹雪が俺の隣に立つまであと_日












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