緑に縋る *死ネタ?
はじまりは、懺悔の言葉だった。
ふらふらと森に立ち入った少年は、ずっと下を向いたままで、拳を握りしめていた。
そして祠を目にした途端、膝をついて泣き崩れた。
どうして、俺は。
あんなこと、言わなきゃよかった。
俺が突き放したから、あいつは独りで。俺のせいだ。俺の。
ごめん。シアン。俺のせいで、お前は。
まるでこの世の終わりかのように泣く少年。
その終わりを受け入れられなくて縋っていた。
やり直したい、と。
気になった××は、ひとり飛び立った。
少年になんとなく覚えがあったのだ。
思った通り、××は一度少年を見たことがあった。
数週間前のウバメの森で、歩く姿を目にしている。そばには同い年くらいの少女の姿もあった。
あの嘆く姿が想像できないほど、少年の様子は穏やかだった。
少女と言い合いをしながらではあるが、微笑ましいものである。
2人が森を出て行くのを見届け、再び飛び立った。
そこで少女が死んでいた。
瓦礫に押しつぶされ、その様態を見ることはできないが、呼吸の止まった顔を見れば、生死は明らかだ。
隙間からは赤色が覗き、凄惨な出来事を彩っている。
不意に赤が動いた。
血かと思っていたものは、赤いギャラドスだった。
――何があった。
質問すれば、ギャラドスが答える。
自分の打った破壊光線で天井が崩れ、少女が巻き込まれたのだ、と。
そんなつもりはなかった。いや、なにも考えていなかった。
怒りに任せて動き、少女を死なせてしまった。殺してしまった。
自分を救おうとしてくれた少女を!
吠えるギャラドスに、森で泣いていた少年の姿が重なる。
少年も自分のせいだと言っていた。なぜ。
――赤い髪の人間の子を知っているか。
問えば、ギャラドスは再び答えた。
この少女と仲がよかったらしい。しかし、直前に少年と少女の間に亀裂ができ、少女に「行け」と促した。
そし少女は一人でロケット団に向かい、死んでしまった。
少女の体を気遣うように、ゆっくりと瓦礫から這い出たギャラドスは、尻尾で少女に乗った石屑を優しく払う。
そんな労わりを受けても、閉ざされた瞼が開くことはなかった。
少年と同じ後悔をその目に宿し、××に助けを求めた。
どうか、どうか少女を助けてくれ、と。
しかし××に、死者を蘇らせる力はない。そんな力は誰にもない。
唯一できることといえば。
「見たか神様。私の勝ち。」
××を捉え、笑みを見せる少女。
それは、ゲットを喜ぶ純朴さも、幻を歓ぶ邪悪さもなかった。
自信と意思と、それに見合う強さがあってこその勝気な笑み。
そのまっすぐな瞳と共にありたいと願う気持ちが、セレビィにも理解できた気がした。
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