色づいた世界 | ナノ
なみのり


 一人旅って随分久しぶりな気がする。
 エンジュからアサギの道、ふと思った。

 旅に出たばかりの時は何とも思わなかったけど、誰かといることに慣れてしまうと少し寂しい。いずれこっちにまた慣れるだろうけどさ。

 誰か出そう。

 4つのボールに触れ考える。ピジョンはさっき出したし、ガーディもジム戦で頑張ってくれたばかり。となるとウパーかメリープ。
 そういえばこの子達、そろそろ進化してもいい頃だよなぁ。……よし、ウパーきみに決めた!

 開閉スイッチを押すと飛び出したウパーはやるべきことは分かっているのか、自ら草むらに入っていく。
 もともとバトル好きというか、見た目に反して強さにこだわる子だ。この調子で野生ポケモンを相手にしていったらアサギに着くころには進化してるかも。








「で。進化してくれて助かったよ、ヌオー」

 頭をなでると嬉しそうに鳴いた。とはいえ、あんまり触ると気が散りそうなのですぐ手をひっこめる。
 ほんとヌオーでよかった。もしウパーのままだったらビートバン状態だ。

 現在、海の上。ヌオーの上からお送りしていまーす。


 はるか後ろ、もうほとんど見えないアサギシティを振り返る。そこに立つ1本線、灯台。
 今は真昼間だからもちろん明りはないけれど、夜になっても明りが灯ることはない。……って、あれ?私帰る頃って真っ暗じゃない?え、大丈夫遭難しない!?ミカンサンおーい!!

 アサギジムを思い出しながら心の中で叫ぶ。何も考えず安請け合いしちゃったかなあ。やっぱ慣れないことはするもんじゃないや。


 ミカンはジム戦の最中でも落ち着きがないというか、上の空だった。そのせいか大した苦戦もせずあっさり勝ってしまったのだ。
 なんとなーく悪い気がして事情を聞いてみたらこれだ。でもそういえばミカン、私が行こうかって言ったら少しの遠慮もしなかったな。何気に人使い荒いぞアイツ。


「ヌオー、疲れたら言ってね」

 ヌオーの負担を減らす為、ボールと財布以外の荷物はミカンに押し付けてきた。
 人を乗せて泳ぐのなんて初めてなんだ。返事があったけど気をつけて見とかないと、な。



「ぅわ!?」


 言った矢先、ぐらりとヌオーの体が揺れた。危うく落ちそうになって慌ててしがみつく。背びれ引っ張っちゃたごめん!

「ピジョンと代わろう、…ん?違うの?」

 ヌオーは疲れを首を振って否定し、目線である一点を示す。
 大きな島だ。その周りに、ああなるほど。見てわかるほどの渦潮が起こっている。あの流れにやられたのか。

 もしもの時は休憩しようと思ったけどあれじゃ近付けない。迂回していくか。


 余分に距離をとったせいでタンバに着くのは予定よりも遅くなってしまった。
 帰りは確実に日が沈んだ後だ。

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