食事を終えてから、私は王都を満喫させていただきました。
お洋服を買ってもらったり、可愛いネックレスやブレスレットなどを買ってもらったり、大道芸を見たり。
今日はアイヴィーさんでなく、ヴェルノさんがお洋服を全部選んでくださいました。
かなり露出の激しい服だったらどうしようか悩みましたが、驚いたことにヴェルノさんが選んだ服は逆に露出の少ないものばかりなのです。
しかも可愛い。レースやフリルがちょっと付いていて、色合いもパステル系の私好みのものばかりでした。
露出の少ない服にホッとしておりました私を見てヴェルノさんがニヤッと笑って、
「禁欲的なのもそそるだろ?」
と言ったので全然安心出来なかったのですよ!
その後でこっそりアイヴィーさんに「男が女に服を送るのは、その服を脱がせたいって男心なのよ。」なんてハイテンションで教えていただきましたが、できれば私はまだご遠慮したいものです。
しばらく顔の赤みが消えずに苦労したのですよ。
今は物見客に混じって王城をグルッと見て回れる通りを歩いております。
買った物はアイヴィーさんとヴェルノさんが持っていて、なんだか申し訳ないのです。
でも持ちたいと申し出てみても二人は頑として譲ってくださらないので諦めました。
「大きなお城なのですねー。」
近くになるとより一層王城の大きさに圧倒されてしまうのです。
テレビで見たことのある海外の綺麗なお城とよく似ています。
私の言葉にヴェルノさんはチラリと王城を見ます。けれどすぐ興味なさ気に視線を前へ戻しました。
「そうか?あんなもん、大体どれも同じだろ。」
「そうよね、同じじゃないかしら。」
アイヴィーさんまで投げやりにおっしゃるのでビックリしました。
でも二人が元はあのお城に暮らしていたことを思い出し、私は「そうなのですか。」とだけ返しておくことにしました。
何となくですが二人はあまり王城が好きではないようなのです。
日が落ちてきた頃、私達はようやく宿へ戻りました。
夕食は幹部の皆さんと食べるようで、ヴェルノさんのお部屋にアイヴィーさんと幹部の方々が集まります。
ちなみに私は船と変わらずヴェルノさんと一緒のお部屋なので移動はしません。
部屋の隅に置かれた今日の買い物を見て、幹部の方々が苦笑しておりました。
…私も買い過ぎだと思うのです。が、ヴェルノさんとアイヴィーさんは少ないくらいだと言うので私はちょっと二人の金銭感覚を疑ってしまいます。
レストランの時と言い、ヴェルノさんもアイヴィーさんもお財布の紐が緩いのですよ。
「船長も副船長も金に関しては太っ腹なんスよ。」
セシル君はそうおっしゃいましたが限度があるでしょう。
ある意味すごいことですが、少しお財布事情が心配なのです。
夕食を食べながら今後についてお話するようでした。
大きなテーブルの真ん中にヴェルノさんが何かが描かれた大きめの洋紙を何枚も広げるのです。
アイヴィーさんが驚いた顔をしておりました。
「それ何時の間に持って来たのよ?!」
「昔ちょろっとな。」
何故そんなに驚くのか私には分かりません。
首を傾げて見ていればヴェルノさんが私の頭を撫でながら教えてくださります。
「城の設計図だ。古いが城なんざそう簡単に造り変えたりしねェから、問題ねェだろうさ。」
なんと!お城の設計図ですか!!
まじまじ見ていると汚すなよ、と注意されます。
私は慌てて顔を離しました。
「ヴェルノ、貴方まさかずっと前から城を襲う気だったの?」
「さぁな。」
笑いを含んだ曖昧な答えではぐらかしていますが、あれは絶対やろうと思っていたのでしょう。
呆れた!と流石のアイヴィーさんも両手を上げます。ヴェルノさんは軽く肩を竦めるだけ。
最初はぽかんとしていた幹部の方々も今は笑うばかり。
アイヴィーさんも最後には「で、今回はどうするのかしら?」と乗り気でした。
ウルフ一家はヴェルノさんが率いるだけあって、皆さん大逸れたことがお好きなようなのですね。
「此処の使われてねェ水路から入り込む。今日見て来たが、この辺りの警備は手薄だ。暗闇に紛れ込めば簡単だろうな。」
かく言う私も悪そうな笑みを浮かべるヴェルノさんの言葉にテンションが上がってしまったのです。
暗闇に紛れて潜入なんて面白そうなのですよ!
…はっ!私、もしかしなくてもヴェルノさん達に感化されてますか?!
パッと思わずヴェルノさんを見れば額を指で押されます。
ちょっとぐりぐりし過ぎて痛いのですよー。
「俺と真白は用事があるから、お前等はアイヴィーに付いて宝物庫でも漁って来い。」
「あら、それは初耳ね。どこ行くのよ?」
「そりゃコイツと俺の秘密だ。なぁ、真白?」
「へっ?あっ、はい…なのです?」
「どうして真白ちゃんは疑問形なのかしら。」
いきなり話を振られたので返事がおかしくなってしまったらアイヴィーさんが苦笑します。
秘密?ヴェルノさんを見ますと私の唇を親指で撫でてニヤニヤ笑っておりました。
…手が。手つきが、なにやら怪しくありませんか?
ずり、と無意味ながらも椅子の上で身を引いてしまいます。
そんな私に声を上げて笑ったあと、ヴェルノさんは顔を皆さんに向けて「そういうことだ、入った後はお前等の好きにしろ。」と言いました。
皆さんはそれぞれに頷きます。
手が離れ、私もやっと食事を再開することが出来るのですよ。
少しだけ冷めてしまったスープを飲んでいる私の前で皆さんは話を進めていきます。
「じゃあ目立たないようにしましょうか。」
「あぁ、お前等と…そうだな。後数人適当に見繕っとけ。」
「了解っス!」
今回は少数精鋭ですね。
あぁ、ワクワクしてしまいます。
話を聞くのに夢中になってしまっていた私に気付いたユージンさんに肩を叩かれるまで、パンを口に入れたままだったのは仕方ないと思うのですよ。
例に漏れずその場にいた全員に笑われてしまいました。