ユカが、死んだ。
てがみひとつだけを残して。
ひどく寂しがりだった彼女が、ひとりきりで、死んだ。
忙しさを理由に、僕は彼女を放ったらかしにしていた。
けれど僕は必死だったのだ。僕の生活は酷く厳しかった。ただでさえ少ない収入。その上あの忌々しい理由で、僕は職を転々としなければいけなかった。
迂闊だった。そうだ。彼女はだれより寂しがりで、死にたがりで、けれどそれを笑顔のうらに上手に隠してしまうような女の子だった。
それに気づいてあげられるのが、彼らの居なくなったいまもうこの世ではただ唯一、僕ひとりであったというのに。僕は。
どうして大丈夫だなんて思ったんだ?どうして気づけなかったんだ?自責の念だけが、ただ、ただ。
けれどなぜだか、彼女は不自然なくらい幸せなかおをしているのだ。なみだでぐしゃぐしゃになった僕の顔と正反対のそれは、まるで聖母マリアのように美しく穏やかだ。
ああ、ずっと、さみしい思いをさせていたんだね。つかれてしまったんだね。らくになりたかったんだね。やっとリリーたちに会えるって、よろこんでいるんだね。ごめんね。ごめんね。ごめんね、ごめんね、ほんとうに、ごめんね、ユカ。
嗚咽が混じり、ことばにならない。
きみの最期の我儘、ぜんぶ聞くよ。ぜんぶぜんぶ、叶えてあげる。
きみの白い肌によく映える、きれいな花柄のワンピースを着せて。僕がいつか褒めたのを、きみは覚えていたんだね。結婚式のブーケのように、優しい色したかわいいお花を用意するよ。しあわせに眠る少女のように、その頬に唇に、紅を落として。そしてそっとそっとキスをしよう。
海に、草原に、あの美しい湖に。南の島だってなんだって、きみの望んだところなら、何処へだって連れていくよ。
そうしたらきっときみは、
ぼくがどこにいたって傍にいてくれるんだろう。
ぼくにはもうきみしかないんだよ。
ごめんね、ごめんね、ごめんね。どうか、ぼくを、許して。