もう、私は長くないだろう。ただでさえ短い命だ。
美しい花びらは色を失い始め、盛りの頃の輝きはとうに去ったが、それでも未だ誇らしげに生を全うしている。
柔らかな面影を残して。
彼は十分過ぎる程に私を慈しんでくれた。
たとえ美しくあれたのが一瞬だったとしても、十分だ。これ以上ないくらいに幸せだ。
盛りを終えた今もなお、窓辺に佇む私の傍へ来ては微笑みかけてくれる。
出来ることなら、もし我が儘が赦されるなら、彼に伝えたかった。
あなたのお陰で私は美しい花を咲かせ、太陽の下で輝くことができたのだと。すべてはあなたのお陰なのだと。
一言で、一言でいいから、感謝の気持ちを伝えたかった。
私は花であり、植物だ。こうやって感情を持つことすら不自然なことなのかもしれない。けれど、もし話すことが出来たら。
彼と同じ様に手足を持ち、自由に動くことが出来たのなら。
わたしは、わたしは。
枯れゆくいのちに願を込めて
2011/01/15
あと二話くらいで終わる予定…