ある朝、私は蕾を開いた。



それはとてもとても突然で、とてもとても大きな変化だった。




視界―尤も、わたしに眼なんてないけれど―に広がる世界はいつもの何倍も鮮明で、キラキラと美しく光り輝いていた。

太陽の光が眩しくて、思わず瞬いてしまうくらいに。



驚くほど、違って見えた。




彼は、どんなふうに見えるのだろうか。





日常にあったどんなものも、こんなふうに輝いて見えるのだ。

いつだって美しい彼のこと。一層輝いて見えるのだろう。




ああ、どうしよう。



そんな彼を見てしまったら私、
まるで人間が頬を染めるかのように花びらを紅く染め上げてしまうかもしれない。




彼はもうすこしすれば起きてくるだろう。

そして花開いたわたしを見て、喜んでくれるだろう。いつもよりたくさん微笑んでくれるかもしれない。







上の階からだんだんに足音が近づく。





ああ、彼がやってくる。









ちいさく、開花。




2010/12/14
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