ありがとう、こころから。
あなたはわたしを愛してくれた。













零れるような太陽の日差しを沢山受けて、私は育った。
彼は私を、この暗く淀んだ屋敷でいちばんにたくさん陽の射す窓辺に置いてくれた。沢山の水を注いでくれた。沢山の愛を注いでくれた。
決して応えるはずのない私に、たくさん話し掛けてくれた。



芽を出せば、彼はとても喜んだ。



聴こえていたよ。あなたの声が。ずうっと。はやくはやく、あなたの顔が見たかった。
だから私、急いだの。芽を出せば、あなたに会えるだろうと思って。




彼は、美しく光を放つ星の名前のひとだった。
その名前の通り彼は美しく、逞しいひと。そして、やさしいひと。


芽吹いてから、少しずつ少しずつ、時間をかけて私は育った。葉が繁り、茎もしっかりと太くなった。



蕾を付けると、彼は一層喜んだ。慈しむように微笑んで、私を眺めることが多くなった。
彼は私のいる窓辺に椅子を置き、それにもたれて一日を過ごした。読書をする日もあった。うたた寝をする日もあった。


うたた寝をする彼のために、私は歌を唄った。彼に届くかはわからない。聴こえるかはわからない。それでもそうしたかったから。

夢の中で、わたしの歌がきこえたらいいのにと思った。





芽生えた想いに名前を付けるなら





2010/12/9
続きます。

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