寮の自室へ戻ると同時に、自己嫌悪が私を襲った。




どうして動揺を隠せなかった。
隠せていれば。





今までは気づいていなかったかもしれない。
しかしさっきの行動で気づかれてしまったのではないか。


それにもし彼らが私にうっすらとでも疑念を抱いていれば、
私が冷静でいられなかったがために、彼らの疑念は確信に変わるだろう。



傷口に爪を立てると、ぷつり、ぷつりと紅が滲む。



嫌われてしまったらどうしよう。軽蔑されたらどうしよう。
また自己嫌悪で切りたい衝動に駆られるが、してしまえばまた同じことの繰り返しだ。
軽蔑されたくなければそんなことしなければいい。わかっているのに。










「もうやだ」







そう独り呟いてベッドに身を投げ出す。



すべてが面倒でならなかった。

























「ムーニー」


あの後、彼らは沈黙のまま食事を済ませ、早々に席を立った。

いつになく深刻な顔をして、ジェームズは問うた。




「どう思ってるんだい。」






自分たちのほかに生徒が居ないせいか、声がいやに廊下に響いた。






「うん?」





まるでなにもわからないかのような顔をしている。





「君も気付いているんだろう。」




そう尋ねてもリーマスは曖昧に笑うだけだ。
ジェームズはすこし苛々して、口調を強めた。





「ユカのことだよ、ムーニー、君もあれをみただろう?
彼女の不自然な行動だってみてきた筈だ、
見て見ぬ振りをするなよ。」






それを聞いてリーマスは溜め息をついた。




「、うん、気づいてるよ。僕が気付かない訳が無い。
君たちよりずっと彼女のことを知ってるし、見てきてるんだから。」




「じゃあどうして、」






「どうしたらいいかわからないんだよ!
安易に触れていい秘密じゃないんだ、一歩間違えれば致命傷になるくらいなんだよ!

どんなに言葉を選んだって、彼女を傷つけない保証はないだろう。
痛いほどわかるんだよ。僕がかつてそうだったように」






「だったら分かるはずじゃないか。
君が欲しかった言葉をあげたらいいんだから。
リーマス、彼女はきっと自分を傷つけることで寂しさや虚しさで空いた穴を埋めようとしているんだよ。
傷つけることが癖になった右手を君が握って、
もう寂しくないよって抱きしめてあげればいいだろう。」




「それが出来れば苦労しないさ。僕は君とは違うんだよ、ジェームズ。」




先に帰るよ、そう言い残し、リーマスは行ってしまった。







「おい、俺らも帰ろうぜ」

シリウスは珍しく余裕の無いジェームズを見遣り、そう口にした。





「そうだね、こんなところにいたってなんにもならない」
















2010/11/24



うわ、まだ続くみたいです。
暗いですね。暗い。



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