>> プロローグ



いつも深い霧に覆われている其処は


まるで


別の空間のように思えた―――



「ヨルノズク、霧払い」
『ホーッ!!』


勢いよく吹く風の音が、洞窟内で木霊する。やがて風が収まってくると立ち込めていた霧が無くなっていき、広い空間がハッキリと見えるようになった。


「ありがとう、ヨルノズク。またよろしくね」
『クルルル…』


返事をするかのように鳴くヨルノズクを私は元の場所へとリリースする。飛んでいくヨルノズクの背を見届けた後、洞窟の奥へと進むべく私は歩き出した。




「…ここが最深部、かな…」


そうだとしたらこれで最後の部屋だな。そう思いながら私はポケットから小さく折りたたんでいた紙を取り出して、サラサラとペンを動かした。


…私は今、此処―もどりの洞窟の調査を行なっている。洞窟は、このシンオウ地方でとある騒動がおさまった後、先程立ち込めていた深い霧の様に忽然と姿を現したらしい。


その為にシンオウ地方のお偉いさん?からわざわざ本部に依頼要請があり、丁度その時ミッションが終わって暇を持て余していた私に白羽の矢がたった、という訳だ。


「…それにしても、」


すごいよね、ここ。


一旦執筆を止めてまじまじと辺りを見回してみるが…洞窟は自然に出来たというよりも、人工的に造られたという印象の方が強い。私は一度持っていた紙とペンをポケットにいれ、周囲を捜索してみることにした。


捜索してから、すぐに何かが壁に書かれているのに気がついた。


「えっと…


ココは


ひかりかがやくせかい

ひかりうしなったせかい


ふたつのせかいが まじるばしょ


…二つの、世界…?」


はて、何かの暗号だろうか。壁の前でこの不思議な言葉の意味を腕を組んで考えてみるが、考えれば考える程、言葉の意味がわからなくなった。


その為に、私は背後から迫ってくる影に気付くことが出来なかった。突然、腰にモンスターボールがガタガタと揺れだし、何事だろうと考えるのを止めたときにようやく後ろに何かがいる事に気がついた。私は慌てて振り返ってみるが…


見えたのは、


本などで見た、ブラックホールを連想させる黒い空間。


そして、妖しく、紅く光る二つの眼。


それらを見た瞬間、私はテレビの電源を消したかの様に、意識がブラックアウトしてしまった。




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