ある日の事でございます。
その少年は、学校が終わり、独りでぶらぶらと自宅に向かって歩いておりました。
空はどんよりと薄暗く、今にも雨が降りそうで、稀にすれ違う車は、ぶぉんぶぉんと音を立て、次々と少年の脇を通り過ぎて行くのです。
そんな、よくある日常の中。
ちょっとした、非日常が生まれました。
ぶぉんと音を立て、また、一台の車が少年の脇を通り過ぎた時のこと。
がつん、ぐしゃり。
少年の数メートル先で何か黒いモノがその車に撥ねられたのです。黒いモノは地面に叩きつけられました。しかし、まるで何事もなかったかのように、車はそのまま走り去って行きました。
その場に残ったのは、その光景を目にし、ただ唖然と立ち尽くす少年と、生きているのか死んでいるのか定かではない黒いモノだけ。
ぽつり、ぽつり。
いよいよ雨が降って参りました。雨は少年の体温をじんわりと奪い、黒いモノの血を洗い流してゆきます。
少年は走り出しました。 涙を流しながら。
黒いモノは抱えられました。 血を流しながら。
少年は気付きました。 黒いモノが、真っ黒な仔犬だということに。
この後、少年と仔犬が一体どうなってしまったのか。
それは、またの機会にお話しいたしましょう。
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