「――何故だッ」
悲痛な叫びが響き渡る。
「どうして女神様は俺を認めてくださらないッ!!」
まるで悲しみや苛立ちといった負の感情を全てぶつけるかのように、荒々しく床を殴り付けるバアルモン。その音は女神像とバアルモンしかいないこの静かな空間を反響し、手にはビリリ…と鈍い痛みが伝わってくる。
しかし彼にとって、これらは別に大したことではなかった。
強くなければ、何も守れない。
だから、強くなろうと思った。 女神の戦士になろうと思った。
誰よりも、誰よりも。 頑張った、努力した。
想いが報われたのか、いつの間にか自分はエンジェモン様に次ぐと言われる程の実力を得ることが出来た。
なのに、何故?
何故、俺には微笑んでくださらないのですか?
女神様―――
何百回、何千回、問いても。 何百回、何千回、叫んでも。
自分の目の前にいる女神像は何も応えない。何も語らない。一向に微笑んでくれはしない。
それどころか、この女神像は自分に対して見向きもしてないようにも思えた。
それはまるで、自分の今までの考えを、想いを、頑張りを、努力を、――そして存在を。
全て否定されたみたいで。
――――――虚しかった。
「一体何が足りないというのですか、…これ以上何を頑張ればいいというのですか…ッ」
そんな時だった。
パァアアアア…ッ――
「!? ッ、くぅ…っ!!」
女神像が、突然光りだしたのだ。余りの眩しさに思わずバアルモンは目を瞑って片腕で光を遮った。しばらくすると先程の光は嘘のように収まり、未だチカチカとする目を無理矢理こじ開けて女神像へと視線を向ける。
「―――人、間…?」
すると、そこには1人の少女がいた。女神像の前で、ふわふわと浮いていた。仰向けになった状態で、淡い光に包まれながら。
ただ、静かに眠っていた。
バアルモンは恐る恐る少女に近づき、そっと抱きかかえる。すると、少女を包んでいた光がまるで空間に溶けるように消えていったのと同時に、少女はバアルモンに寄りかかる体勢となった。
――…あの時、女神様が何のために俺と少女を出会わせたのかは今でもわからない。
だが、
この少女と出会った事で
女神様が自分の今までの考えを、想いを、頑張りを、努力を、――そして存在を。
全て否定している訳ではない、と
そう、思えるようになるまで
たいして時間はかからなかった。
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