皆様、お初にお目にかかります。
わたくし、御子様と共に薬草を育てております“テイルモン”と申します。どうぞ良しなに。
今回の物語は、恐れながらもわたくしめが進める事となりました。不肖ながら誠心誠意努力いたしますので、何とぞご清聴の方をどうかよろしくお願い致します。
さて、それでは早速お話いたしましょう。
これから話す事は、いつもと変わらぬ日常の中で起きた出来事でございます。
始まりは、そう…わたくしの仕事場である医務室からでしょうか―――
「テイルモーン、いる?借りてた本返しにきたんだけど…」 「御子様!わざわざ医務室にまできていただなくとも、おっしゃって下されば取りに行きましたのに…」 「そんな、貸してもらったのに取りにきてもらうなんて悪いし、それに、テイルモン達は治療で忙しいでしょ?」
そう言って御子様はわたくしに笑顔を向けられた。
…ここ最近、バグラ軍の動きが活発となってきているらしい。しかも、つい先日からは―数は少ないとはいえ―ちらほらとサンドリアの都近くにも現れるようになったと聞く。
敵軍が現れたとなれば必然的に女神の戦士団と対峙する事となり、いつにも増して怪我人が続出してきた。それゆえ、御子様のいう通り、わたくし達のような医療に関わるデジモンが怪我人の治療や調薬といった面で活躍する場が徐々に増えているのです。
「ッテイルモン、急患だ!急いできてくれ!!」 「あっ、はい!かしこまりました!!」
慌ただしく現れた仲間に呼び出されたわたくしは急いで棚から薬を取り出していく。
「私も手伝うよ、テイルモン」 「いえいえ!お気遣いは大変嬉しいのですが、これ以上御子様の手を煩わせる訳には…」 「ううん、そんなことない!むしろ、私が足手まといになるかもしれないけど…でも私は今出来ることをしたいんだ」
戦士団の皆はサンドリアを、このサンドゾーンを守るために頑張ってくれてるのに、私は何もしないで黙って見てるだけなんて出来ないよ。
そんな、強い想いがこもった御子様のご意志を無下に出来ず、私は「…ではお言葉に甘えさせていただきます」と応える他なかった。
(それにしても、あの時の御子様の嬉しそうな笑顔といったら…ッ!)
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