4



「…っ?」

起きたら目の前に、啓太。

「は、」

ちっけえ。

狭いソファの上、慌てて飛び起きようとしたが、覆い被さるように眠る啓太のせいで全く無駄な行為に終わった。

っつーか起こしたら絶対怒るだろこいつ…。

起こさないために、身動きもとらずぼんやりと天井を眺めてみる。
動けない要には、自分たちの間に辛うじて挟まれた柔らかいタオルケットの肌触りを楽しむことぐらいしかできない。

ん、タオルケット?

そういやいつの間にこんな物掛けたんだっけと思惑して、たどり着いた結論。

やばい、これ啓太が被ってたんじゃないか?
それを俺が分捕っちゃったとかそういうことだろ…。

まだ朝というには早くて、カーテンの隙間から洩れるのは僅かな街灯の光。

セックスするときでさえこんなに近くにはいない。
俺たちの間にはキスなんてのも全くないから、本当、こんな近くで見るの久し振りかも。

仲良くバイトしてた頃の方が、きっと近かった。

「やめどきかな…。」

外を走る車のエンジン音に紛れた呟きは、ほの暗い夜の中に落ちて消えた。
声に反応したのかただ寝苦しかっただけなのか、小さく唸る啓太に要はびくりと身体を揺らす。
窮屈なソファの上、無理やりに寝返りを打つ啓太。
ぐでんとソファから飛び出した片腕のお陰で、開いた隙間からするりと要は抜け出した。

「んー…っ!帰るか。」

タオルケットが自分のためのものだったことにさえ気付かずに、ふわりと床に落ちたそれを拾い上げると、啓太に被せる。
知らず知らずの内に、意図せずまったりとした時間を過ごした要は、満足そうに欠伸をしながらううんと身体を伸ばした。
その行動とは裏腹に、眉尻を下げた物悲しい表情。
近付く程に遠くなる距離。
一度だけ盗み見るようにテーブルの上に視線を滑らせて、無くなったオムライスにほうとため息を吐くと、自宅に帰るべく深夜の街の中に姿を消した。


prev next



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -