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現生徒会への、リコール。
簡単に説明すれば、他の生徒会執行役員、その中でも委員長などが発令できる、生徒会への解散命令だ。
とはいえ、発令しても一般生徒の承認を多く得なければ実行には移れないのだが。
そして今そのリコールを宣言したのは、風紀委員長である進藤和樹で。

「やっ、やだ!!」

進藤が予想していた通り、ひよりは大きく首を横に振った。
予想していたとはいえ、生徒会を庇うひよりをやはり腹立たしく感じて進藤は眉を寄せる。
普段はひよりに甘い進藤が放った言葉に、涼や隼人は黙って様子を見る他なかった。

「お前は、」

眉をひそめたまま進藤が口を開く。

「お前はいつまであの生徒会のために自分を傷付ける気だ?」

もう見ていられない、と進藤が言葉を紡いで、それには思わず涼と隼人も頷いた。

「だっ、だって進藤先輩…!」

切羽詰まったようにひよりがベットの上で身を揺らせて、進藤にぐいと詰め寄る。
何度か口を開いては閉じてを繰り返して、それから意を決したようにひよりはもう一度口を開いた。

「次の、…次の生徒会が決まるまで、待って欲しいんです。」

次の生徒会。
夏休み前の推薦で次期生徒会が決まるわけだから、わりと期間は短い。
この学園の行方を考えてのことか、と進藤はひよりの髪を柔らかく撫でた。
漸く進藤が表情を緩めたのを確認した隼人が、進藤の肩に手をかけて笑う。

「まー、あと一ヶ月もないやん!
ひよたんが言うとるんやしもうちょい待ったろうや。」

「俺がひよりに引っ付いて生徒会の奴らに会わせないようにするんで、俺からもお願いします。」

悲しいほどに寂しい表情をしたひよりに耐え兼ねて涼まで助け船を出すと、進藤は諦めたように視線を落とした。

「お前ら、あと一ヶ月、本当に何もないよう頼むぞ。」

その言葉に、ひよりがぱああと笑みを取り戻したのを見て進藤は立ち上がる。
どうやら授業に戻るようで、空気を読んで一緒に立ち上がった涼とこのままサボる気満々だった隼人を引き連れてひよりに背を向けた。

「三人とも、心配してくれてありがとーねぇ。」

ひらりと控えめに手を振る。

「ひよたーん!
あとでまたお見舞い来るからなあ!」

そう言って振り返った隼人の襟元を思いきり引いて、進藤が玄関の扉に手をかける。
勢いよく締まった首にうえ、と隼人が声をあげるのを見て、ひよりは小さく笑いを溢した。

「とりあえず俺が後でノートは持ってきてやるから、ゆっくり寝とけ。」

「うん、ありがとー。」

ぱたん。
進藤、隼人に続いて玄関を潜った涼に礼を言って、それで玄関の扉は閉じられた。
三人を見送ったひよりは力が抜けたようにその場にしゃがみこむ。
廊下の壁に身体を預けて、膝に顔を埋めた。

「…ごめんね、みんな。」

ひよりの呟いた声は、押し当てた膝に飲み込まれて誰にも届くことはない。
誰への謝罪なのかもわからないまま、一人の部屋にぽつりと消えた。


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