12



ぐらり。
再び揺らいだ視界の理由は、長い睡眠から目覚めたことであった。

「ん、」

微かに手に残るのは、熱い命の温度。

「ひより!
っあー、よかった…。」

真っ先に視界に映った自室の見慣れた天井に次いだのは、眉を下げてひよりを見つめる涼である。
その後ろには進藤や隼人、それにクラスメイトの姿もあった。
安堵の声を洩らしてがばっと抱き付いてきた涼に、ひよりは起こし掛けた身体を再びベッドに沈めた。

「え、え?
どーしたのみんな、」

戸惑うひよりに、隼人も上から覆い被さる。
更にぎゅむむとベッドと彼らの間に挟まれて、じたばたともがくと、突然のし掛かっていた体重が全て退けられた。
漸く満足に身体を起こしたひよりに進藤が笑いかける。

「身体は大丈夫か、羽原。」

どうやら涼や隼人を退かせたのは進藤なようで、ぐいと彼らを後ろに押し退けると、ぐいとベッドの直ぐ側に立った。

「え、えと、大丈夫ですけど…?」

どういうことだと状況把握に徹して、そこで漸くは、と視線を止めた。

あ、階段から落ちた、かも。

あやふやな記憶を後押しするように、進藤からもその旨を伝えられて、ひよりは普段通りに笑ってみせた。

「わー、心配掛けちゃったかな、ごめんなさい。」

集まってくれたクラスメイトたちもぐるりと、見回してから頭を下げる。
一般生徒の部屋に比べれば少し大きめの部屋なのだが、こんなにも人が入るとは。
クラスメイトはほとんど集まっているらしく、ひよりが意識を取り戻したのを見てみんながみんなぱああと笑顔を溢した。

「ほんと心配したー!」

「羽原さまが階段から落ちたって聞いて僕…!」

涙ぐむクラスメイトまで出て、ひよりも思わず顔を綻ばせる。
わやわやとベッドの周りで騒いで、それから一人の生徒が慌てて立ち上がった。

「やべえ!
担任からもう時間稼ぎできねえってメールきた!」

「うおおまじか!
あっ、実は今担任の授業なんだけど、みんなしてそわそわしてたら行ってこいっつってくれてさ!」

なるほどとひよりは頷く。

大体ここ、一般生徒は立ち入り出来ないようになってるから、せんせーに協力してもらわないとだもんねぇ。

「みんなありがとーお。
ほんと嬉しい、明日には教室行くねぇ。」

クラスメイトを見送るためにベッドから立ち上がると、少しだけ寝起きだからか少しだけふらついた。

「っと、あぶねーな。」

とん、と直ぐに支えてくれた涼にも笑顔を向ける。

「ありがとー、」

そのまま涼に支えられて玄関までクラスメイトを見送って、そうして何故か一緒に帰らなかった涼と共に部屋に戻って。

「あは、やっぱりこのメンバーが残るんですね。」

涼と隼人、そして進藤からの視線を誤魔化すようにひよりは笑った。

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