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新入生歓迎会も、ひよりの知らないところでなのだが無事終わり、仕事の量も割と落ち着いてきた今日この頃。

「……なーに?」

「ひよ、お昼、行こ。」

んーと、何なんだろうこの状況。
相変わらず遊ちゃんが入り浸って煩いことこの上ない生徒会室なんだけど。

ソファで遊といちゃいちゃ楽しんでいる大河と、それを邪魔しながらも優雅に紅茶を啜る杏里。
二人の相手をしながらも、こちらに視線を送る遊。
そして、

「あー、俺ねぇ、今日も涼たちと約束しててー。」

「ん、わかった。」

大きく変わった誠の様子。
しゅんと頭を下げてしまった誠に、思わず罪悪感を感じてひよりはごめんねと呟いた。

…ぶっちゃけこの前よりもぎくしゃくしてる気がするんだけど。

気まずい空気が流れると、珍しく褒めたくなるタイミングで遊がばたばたと足音を立てる。
ひよりたちの元へやってきた遊に、誠はシャツの肩口を引っ付かまれてきょとんとした。

「じゃあ俺と食堂行こうぜ、誠!」

しょぼくれた空気を出しつつも遊の言葉に頷く誠。
良かったじゃん、という気持ちを込めて微笑んでやると誠は何やら浮かない表情をした。

「僕も行こうかな。」

「おう!大河も行くよな!」

左手で誠と、右手でソファから腰を上げた杏里と手を繋ぎ、楽しそうにはしゃぐ遊。

「ちょっと用があるから後で合流する。
ちゃんと俺の席も取っとけよ?」

悪戯に笑った大河に額を小突かれて、はにかんだ遊はそのまま杏里と誠に挟まれて生徒会室を出て行った。
ひよりと大河、二人きりになって途端にしーんとする生徒会室。

うぇー、気まずい。
こんなときにはじゃじゃーん。
ヘッドフォンちゃんの出番だよー。

頭の中、まるで一人会話を続けながらごそごそと以前遊対策で購入したヘッドフォンを装着した。

うん、完璧。

流れる女性ボーカルの声に、ひよりは満足げに鼻を鳴らす。
気まずさを紛らわすように、新入生歓迎会が終わってからはめっきり放置していた書類に手をつけた。
元々仕事をまともにするタイプではなかったから、自分の机に書類が積み重なるのも珍しくはないがこんなに積んでるのは久々かもしれない。

「……よ、」

今こそ君たちの出番だ、なんてつまらないセリフを心の中で吐いて、来月の予算案にペンを走らせる。

我ながら、今日冴えてるかもー!
なんだかすらすら計算出来、

「…ひよ!」

「ふお!?」

大河の大きな声。
驚いてびくりと肩を揺らした拍子に、付けたばっかりのヘッドフォンが背中を伝って転がっていった。
はっと顔を上げて、漸く睨まれていたことに気が付く。

「まこに何言ったんだお前。」

外れたヘッドフォンを見て、声のボリュームを下げた大河。
当然何のことかわからなくてひよりは首を横にだけ振った。

「最近まこの様子変だろうが。
ピクニックにも来やがらねぇし、どうせお前が何か吹き込んだんだろ。」

苛立ったように息を吐き出す大河に、ひよりはむっと顔をしかめる。
酷い言いように咄嗟に掴んだペンケースを大河に向かって投げつけた。

「…ぁ、にすんだ!」

ひょいと避けられて、布製のペンケースは壁にぶつかる。

「あは、」

先ほどよりも鋭く睨まれたひよりは敢えてへらりと笑った。
手元の予算案の隅に、署名欄が見えてげんなり。

判子ペンケースの中だー…。

仕方なく重い腰を上げて、大河の座るソファを通り過ぎたひよりはペンケースを拾い上げる。
そして自分のデスクへの帰り道、それはそれは久しぶりにソファに腰を下ろした。

昔はかいちょーの隣が決まって俺の場所だったけど、今は二人だから向かい側。

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