どうしたらいいのかしらこの状況。前方には困った様子の男女、隣にはおろおろした様子の宮村。……私はどうしたらいいのかしら。

「やっぱり右だよ!」
「普通に考えて左だろ!」

昨日の夜、突然いつものように京介に呼び出された宮村は、これまたいつものように家に泊まり、今朝は一緒に登校しているのだけれど。まさか、こんな状況に出くわすとは思いもしなかった。宮村は多分っていうか絶対にあの2人をほっとけないのだろう。困っている人をほうっておけないタイプなのだ宮村は。そんなこと分かりきっている。はぁ、とため息をこぼすと宮村がこちらを見た。事情を聞きましょう。そう言うと宮村の表情が明るくなって、私は自然と笑みがこぼれた。心の中で、ね。

「どうかしたの?」
「右だってば……えっ?」

言い争っていた2人に声をかけると、きょとんとした様子でこちらを見やった。よく見ると、2人は私たちが着ているのと同じ制服を着ていて、しかも相当顔立ちが整っている。柳くん並だわ、なんて馬鹿なことを考えていると、小柄な女の子がもしかして、と口を開いた。

「もしかして、片桐高校の人ですか?」
「そうですけど……」
「やっぱり! よかったぁ……あたし達、今日から片桐高校に通うんです!」
「道に迷ったけどな」
「それは慎二のせいじゃんか!」
「愛しの沙菜が俺のせいにする! うわ、傷ついたー」
「えええ!? うそ、ごめんね慎二!」
「うん、許す」

仲睦まじい2人を見ながら、宮村がこの2人かぁと暢気に呟いた。何か知ってるの?と聞いたら、会長から転校生が来るって教えてもらったとにこにこ笑いながら答える宮村に、ふうんと返す。

「あの、良かったら道を教えてもらえません? 俺も沙菜も地理には疎いんです」
「それは構わないですけど……一緒に行ったほうが早いでしょう?」
「いいんですか!? ありがとうございます!」

やったね慎二!と宮村の返事に満足そうに女の子は笑う。その様子を見ながら男の子の方も、やったな沙菜!と言って笑った。面白い子たちだなぁとぼんやり眺めていると、あ、と女の子がこちらに向き直った。

「あたし、相沢沙菜っていいます! 3年です!」
「相沢慎二です。沙菜とは双子です」
「(同い年だったのね……)堀京子、3年です」
「(同い年だったんだ……)宮村伊澄です。あ、3年です」
「同い年! 敬語なくていーですよ!」
「そう? あ、あなた達もなしでいいわよ」

じゃあお言葉に甘えて!と満面の笑みで言うものだから、つられて笑ってしまった。立ち止まっていた足を動かし、学校へ向かって歩きだす。ちなみに、ここの三叉路は右折でも左折でもなく直進である。先ほどまで言い争っていた双子は、もうそんな事は気にしていないようだけれど。

「あたしのことは沙菜って呼んで!」
「苗字じゃどっちか分からないものね」
「そうなんだよなぁ困ったことに。ってことで、俺も慎二で」

沙菜と慎二ね。隣を見ると、宮村はにこにこと嬉しそうに笑っていた。この2人もいい子そうだし、宮村が嬉しいなら、いっか。沙菜がくるりと振り返り、2人はねぇ、とうーんと何かを考えるようにして、ぱっと花が咲いたように笑ってこう言ってのけた。

「京ちゃんといっくんだね!」

……この子、大物だわ。改めましてよろしく!と憎めない笑顔の彼女に気付かれないように、こっそり溜め息を吐いた。


太陽と邂逅
(あ、宮村の顔真っ赤)


 
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