新品のカッターシャツに袖を通すと、まだ生地が柔らかくないせいか少しぱりっとした感じがした。そんな感覚がなんとなく嬉しくて自然と笑顔になる。丈が短めの黒いスカート、胸元に映える赤いリボン。それらを身に纏って全身鏡の前に立つ。まずはじめに覚えたのは違和感。でも、大丈夫。だってこれからはこれが当たり前になるんだもの。

「沙菜、サイズ平気?」
「あ、刹那姉! うん、ちょっとだぼって感じでおっけー!」
「じゃあ慎二に見せてきな。すっげーそわそわしてたからアイツ」
「ほんとに!? みせてくるー!」

部屋から飛び出して慎二の部屋へ直行。後ろから刹那姉が転ぶなよーって声をかけてくれた。いやいや転びませんよ!ふーんだ!と、思ったらドアに激突した。めっちゃ痛いよこれ!前方不注意には気をつけよう……。うん。
気合を入れ直してドアを開ける。そこには同じように新しい制服を着た慎二がいた。見慣れない格好だなぁなんてぼんやりと思っていると慎二がこちらに気づく。

「沙菜」
「慎二ー! みてみて似合うっ?」
「似合う似合う。沙菜に似合わないもんは無いから大丈夫大丈夫」
「えへへっ。慎二も似合うよ!」
「まじでかさんきゅー。沙菜可愛いもうほんと可愛い」

そう言って慎二はあたしをぎゅーっと抱きしめた。それに負けないようにぎゅーっと慎二に抱きつくと、慎二は痛い痛いと悲鳴を上げた。しまった、力入れすぎた。

「ごめんね、慎二」
「大丈夫……沙菜の愛が痛い……」
「ほんとごめんね、相沢家の女は怪力になる家系らしいの」
「それどんな家系だよ……否定できないところが怖ぇよ……」

よしよし、と背中をさすると慎二はくすぐったいと言って笑う。さっきのやり直しってことでもう1回抱きついてみる。今度は力を入れすぎないように気をつけて。

「沙菜さんどうしたの」
「慎二さん、明日から学校ですね」
「そうですね。不安?」
「ちょっと。だって、日本の学校行くの初めてだもん」
「だよなぁ。ま、なんとかなるっしょ。沙菜には俺がいるし?」
「……うんっ!」

嬉しくてぎゅーっと抱きしめる力を強くすると、慎二が痛い痛いと呻いた。ごめんね、慎二。そう言ってさっきと同じように背中をさする。慎二はまたくすぐったいと笑う。様子を見に来た刹那姉が呆れた様子で、何してるのと聞いてきた。2人で顔を見合わせる。あ、多分これおんなじこと言うなぁ。

「「らぶらぶ」」

やっぱりはもった!2人で声を上げて笑う中、刹那姉だけは溜め息をついて出て行った。もうすぐ夕飯だからね、と伝言も忘れずにしていく刹那姉はやっぱりしっかりしてる。ちょっと男勝りなのが玉に傷なんだけどね。

「しーんーじー」
「んー?」
「がっこー、楽しみだねぇ」
「そうだなー」

顔を見合せて笑う。2人ならきっと、大丈夫だよね。慎二がいるなら怖いものなんてきっとなにも無いよ。明日からはきっと、もっと楽しい日常が待ってるんだから。


不安も喜びも双子ならね、
(半分にも2倍にもなっちゃうんだよ!)


 
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