透き通った青空の日だった。前日までの雨が嘘みたいに太陽は輝き、卒業生を祝福しているようだ。笑顔で写真を撮る人がいれば、友人と泣きあっていた人もいた。そんな光景をぼんやりと眺めながら、私はただあの人を待っている。いつもならふざけあっていたはずなのに、本音なんて中々言えなかったくせに。それでも、この機会を逃してしまったら、もう会えない気がして。そんな後悔を背負うくらいなら、きっと今日たくさん傷ついた方がいい。どうせ、さよならなのだ。どう、転んだって。ふわりと春風が鼻腔をくすぐった。暖かい、春の風だ。じわりと目頭が熱くなる。ゆるりと息を吸えばそれはぼろぼろと溢れだした。寂しいね、淋しいよ。嬉しかった、楽しかった、辛かった、苦しかった、悲しかった、それでも、だからこそ、幸せだった。思い返すのはあの人ばかり。それは笑った顔だったり、真剣な表情だったり、ふざけた態度だったり色々だ。そのどれもがとても愛おしい。思い出は、熱を帯びて輝くのだ。たとえそれがどんなものだったとしても。きっと、確かにそれは残るのだ。ずず、と洟をすすった。同時に、あの人の姿が見えた。言いたいこと、たくさんあるんです。そのどれもが、多分きちんとした形にはならないけれど。いっぱい、時間がかかっちゃうけれど、聞いてくれますか。笑って、頭をなでてくれますか。深呼吸をして、にこりと笑顔をつくった。気を抜いたら、また泣きそうだ。もう泣いてるかもしれないけれど。

「あの、」

澄んだ空気に声はよく響いて。どうか聞いてください。困るかもしれないけれど、もし抱えきれないんだったら捨ててしまったって構わないんです。聞いてください、叶わなくたって悲しいけれど構わないんです。聞いてください、忘れてくれたって構わないんです。ただ、一瞬でも貴方の中に私が残るなら、それで。

「好きでした、」



ど う か 幸 せ に ど う ぞ 幸 せ に



でも、やっぱり、こんな一言がこんな私が貴方の思い出になって、そして貴方が笑顔になってくれたら嬉しいです。
心の中でそっと祈る。どうか、貴方の歩む道が安寧なものでありますように。どうか、貴方の笑顔が未来にも続くものでありますように。ありがとう、ありがとう、さようなら、またいつか。




 
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