机に並べられた綺麗な料理の数々。反して食べ物とは呼びがたいケーキになるはずだった何か。向かい合わせに座ったまいだーりんこと火神大我くんは今日で16歳になりました。

「解せぬ!!」
「うおっ!? 何だよ急に!」
「なんで彼女の私より料理できるの? 料理男子? カッコイイよチクショウありがとうございます!!」
「いや、まぁ一人暮らししてっしな……つーか、お前は料理以前の問題だろ」

カントクよりひでーぞコレ、とケーキになるはずだったスライムを指差して笑う大我くん。私も自分で作ってみてビックリしたよ。焦げるとかいう領域じゃなくてジェル化するとか誰が思おうか、いや思わない。せっかく作ったけどもれなくゴミ箱行きですおめでとうございます。

「大我くん、チーズハンバーグめちゃくちゃ美味しい」
「おーそりゃ良かった」
「ショートケーキ失敗してごめんね」
「ショートケーキだったのかコレ……まぁ、いいわ」
「あと、誕生日おめでとう」
「それ最初に言うべきことだろ……サンキュー」
「さんきゅーの発音がカッコイイです」
「向こうで喋ってたからな」
「英語の成績悪い癖に!」
「それとこれとは関係ねーだろ!」

ハンバーグを切り分けていた箸が滑って、カチャンと皿の淵に音を立てた。無音のこの部屋は、そんな生活音や私達の会話だけで満たされる。私が笑うと、大我くんは仕方ないという風に笑って、ごはんを口に運んだ。硬めに炊いたお米が好きな大我くんは、柔らかめに炊いたお米が好きな私に合わせて、少し柔らかいお米を炊いてくれるようになった。大我くんに倣って口に入れたお米を噛むと、お米の甘さと同時に幸せを噛み締めている気がした。気じゃなくて、絶対してるんだけどね。

「私も料理上手になりたいなー」
「アレは練習してどうにかなるレベルじゃねーだろ」
「ひど! 大我くんひどい!」
「だから、お前は大人しくオレが作った料理食っとけ」

ぴたり、とサラダに伸ばしかけていた手が止まる。バッと顔を上げると、髪の毛同様に真っ赤に染まった顔がそこにはあって。それを見た私も、多分顔どころか耳まで赤いと思う。集中した熱が思考を鈍くするけれど、私は多分そんなに頭が悪いわけじゃないし、大我くんが言った言葉の意味も理解出来ている。伸ばした手を元の位置に戻して、意味もなく崩していた足を正座の体勢にしてみたりして。

「えっと、じゃあ、私が大我くんの分まで目一杯稼いできます」
「おー。じゃあ、オレは家のことやっとくわ」
「……不束者ですが、よろしく、お願いします」
「……こちらこそ、よろしく、お願いします」

いつの間にか大我くんも正座をしていて、2人して頭を下げていた。顔を上げるタイミングが同じものだから、はたと視線が合って、なんだか笑ってしまった。2人とも、赤い顔をしたまま。

「ひなた」
「ん?」
「コレ食い終わったら、ケーキ買いに行こうぜ」
「うん!」
「あと、」
「あと?」

はさんだ机の距離なんて、あっという間にゼロになった。唇が、高い熱を伝える。依然と真っ赤な顔をして、「約束な、」なんて笑う彼にはもう太刀打ちできないくらいべた惚れなわけで。こういう場合は『誓い』じゃないのなんて思ったけれど、それは数年先の未来にとっておこう。まずは、何よりも愛しい彼の誕生日を祝うことが、彼女の役目ってもんでしょう?


遠くない未来を誓う



 
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -