(新しい学校、新しいクラス)
(少し怖くても、入ってしまえばきっと、)

「はじめまして、蓼科ありすです。親の都合で中途半端な時期に転校してきてしまいましたが、皆さんと仲良くしたいです。よろしくお願いします」

にこっと笑って、お決まりの言葉を並べた自己紹介をする。親の事情とかおもいっきり嘘吐いちゃったけど、まぁいーよね。ぐるりと教室を見渡す。氷帝学園中等部3年A組。これから約1年間過ごす場所。青春やり直しって夏華ちゃんは言ってたけど、まさか3歳も若返るとは。ていうか、恋愛とかあんまり興味ないし、青春やり直しって言われても何すればいいか分からないし。とりあえず、皆と馬鹿騒ぎできれば十分かな。そんなことを考えて先生に指定された席に着く。教室の窓側一番後ろ。転校生の指定席といっても過言ではない席だった。すごく嬉しい。

「蓼科さん、だよね?」
「うん。あ、ありすでいいよー。よろしくねっ」
「あ、木下ゆかり。ゆかりでいいよ、よろしく」

隣の席の女の子が声をかけてくれた。なんか嬉しいよね、こういうの。ゆかりちゃんかぁ。綺麗な子だなぁ。年齢的にはあたしの方が上なのに、ゆかりちゃんの方が年上っぽい。

「ねぇねぇ、他のクラスにも転校生がいるって聞いたけど、ありすの友達?」
「うん、あたしの親友。ちょっと事情があって、一斉に転校が決まったの」

問題起こしたとかじゃないからね、と釘をさす。あれ、でもこれって逆効果でかなり怪しいんじゃない?そう思ってすごく後悔したけれど、ゆかりちゃんは特に何を言うわけでもなく納得していた。あたし、ゆかりちゃん結構好きかも。さっぱりしたタイプの子だ。向こうは、あたしを不審がってるかもしれないけれど。それはそれだ。うん、やっていけそう。あたしの中に巣食っていた不安は少しづつ解消されていた。


 ***


「せ、妹尾桜、です。不束者ですがよろしくお願いします!」
(((不束者……??)))

自己紹介をしたら、みんなの頭の上にハテナマークが浮かんでいた。あれ、私、なんか変なこと言ったかな?私が入ることになったのは3年B組。3階の端から2番目にある教室だ。皆は大丈夫かな、と考えていると先生が笑いをこらえながら私の席を教えてくれた。何で笑いをこらえてるんだろう?私、変なことしたっけ?

「妹尾さんって面白いんだね」
「え……?」

席につくと前の席の男の子が話しかけてくれた。すっごい、綺麗な子だ。男の子はまだ少し声をもらしながら笑っている。そんなに笑われると恥ずかしいんだけどなぁ。彼が笑う姿はそれはそれは綺麗なもので私は笑うのやめてほしい、なんてとても言えたものじゃなかった。だけどそんなにも笑えるほど私は変なことを言ったのか、それは知りたい。そう思って口を開く。

「私、そんなに変なこと言ったかな?」
「だって、不束者って……」

普通言わないよそんなこと、と男の子は指摘する。え、言わないの?じゃあ、私相当変なこと言ったことになるのかな……。男の子はひとしきり笑った後に手を差し出した。

「俺、滝萩之介っていうんだ。よろしく」

差し出された手をつかんでいいものかと戸惑う。おそるおそる右手を差し出してやんわりと握ると、彼が安心したように笑った。私もなんとなく嬉しくなって、笑って答える。

「妹尾桜です。改めまして、よろしくお願いします」

そう言うと、滝くんはまた可笑しそうに笑った。……あれ、また私、変なこと言ったかなぁ?



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