(期待とか、そんなのしてなかったといえば嘘になる)
(だって、こんな世界、いらなかったから)
(だから、彼女のその言葉が叶えばいいと思った)

ちりんちりん。窓枠にぶらさげた風鈴が風に揺れて綺麗な音を鳴らす。冷房が効いた部屋でも窓から入り込む日差しは暑くて痛い。コップに注がれたまま口を付けていないアイスティーも大分ぬるくなっていた。

「とりあえず、8時にはここ出て学校行こうね!」
「でも、学校に忍び込むのはちょっと怖いなぁ……」

少し興奮気味に話す夏華ちゃんと対照的に理紗子ちゃんは心配そうだ。こんな話をしてるのは、今日は私たちが前から計画していた流星群を見に行く日だから。学校に忍び込むのも計画のうちのひとつだ。でも確かに、夜の学校に忍び込むのはどきどきする。それが夏休みだからなおさらに。まぁ、うちの学校はセキュリティ甘いし多分大丈夫だと思う。多分。

「理紗子ちゃん心配しすぎー。うちの学校セキュリティ甘いからだいじょーぶだよ」

あ、ありすちゃんも同じこと考えてたんだ。なんだか嬉しいなぁ。ほわほわとした気持ちになって自然と頬が緩む。あれ、なんだか私ってばちょっと変な人っぽい。私を見て祐美ちゃんが顔をしかめた。ひ、ひどい!

「そうかなぁ……うん、そうだね。うん、がんばる」

小さくファイティングポーズをする理紗子ちゃんに夏華ちゃんが可愛いと抱きついた。小さく悲鳴をあげて理紗子ちゃんは驚く。相変わらず、2人は仲がいいなぁ。うらやましい。

「……おなかすいた」

祐美ちゃんがぽつりとそんなことを呟いた。そう言われてみれば確かにお腹が空いたかもしれない。いくらまだ日が出ているとはいえ今は夏。時計の針はとっくに6時を回っていて7時になるまであと10分もない。時間が経つのは早いなぁなんて思ったそのとき、ぐぅとおなかが鳴った。私だった。恥ずかしい。

「桜もおなかすいたの?」

きょとんとした顔でありすちゃんは私に尋ねる。それにこくんと頷くと、ありすちゃんは立ち上がる。

「ごはん、つくってくるよ。オムライスでいい?」
「オムライス!」

夏華ちゃんが目をキラキラさせながら、半熟がいい!とリクエストしていた。それに二つ返事で了承してありすちゃんは部屋を出ていく。あわてて立ち上がって、わたしも手伝う、と言ったのは理紗子ちゃんだった。あ、私も手伝った方がいいかも。そう思ったけれど、夏華ちゃんに荷造り手伝って!とお願いされた。その隣では祐美ちゃんが携帯で流星群のピークの時間を調べている。

「楽しみだね、流星群」

私がそう言うと、夏華ちゃんはにっこりと笑った。

「ね! 楽しみ!」
「綺麗に晴れるといいけどね」
「晴れるって! 大丈夫だよ!」

夏華ちゃんがそう言うから、多分流星群は綺麗に見れると思う。なんだかそんな気がしてきた。望遠鏡とかを準備し終えた頃には、下の階からおいしそうなにおいがしていた。



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