本日は雨天につき練習は中止らしい。けれどさすがは強豪校というべきか、レギュラーと準レギュラーはトレーニングルームで自主練だとか。偉いなぁ凄いなぁとか思ってたけれどマネージャーはそれに付き合わされる運命なんですよね。うん、知ってた。

「今週の日曜に立海との練習試合を組んだ」

練習が始まる前のミーティングで跡部くんはそんなことを言った。テニス部のみんなはざわざわしてたけどあたし達はさっぱりだ。立海って、何。どこ、それ。話の流れ的に多分テニス強い学校なんだろうなーってことだけ理解した。そのあとも練習がなんたらかんたらとか大会がうんぬんかんぬんとか、あんまり話聞いてなかったけど多分そんなようなこと話してミーティングは終わった。別に悪気はないんだよ。でもほら、テニスのことまだ分かんないからさ!はい、言い訳です。そんなわけで今日もマネージャー頑張りますかーと気合を入れてみたところで跡部くんからの本日の指令。

「買い出しに行って来い」
「ええええ雨降ってるじゃんか!」
「2,3人でいい。宮永、文句言ってんじゃねぇ」
「はーいうちお留守番! うちと理紗子はお留守番!」

人の話を聞かない夏華ちゃんの後ろで跡部くんが青筋たててたことは見なかったことにしよう。理紗子ちゃんがわたわたしてたけど夏華ちゃんが決めたことだから多分2人はお留守番だ。

「じゃーあたしと桜と祐美で買い出し行くねー」
「え、でも、いいの……?」
「いーよいーよ気にしないでー。それで、何買ってこればいーの?」

そう聞くと跡部くんはメモを差し出した。綺麗な字で書かれたそれに目を通すけどあたしには分からないものでいっぱい。まあ、祐美がいるからだいじょーぶか。頼んだぞと言い残して跡部くんもトレーニングルームに入っていった。それじゃあ行こうかと言う前に祐美が難しい顔をしてあたしの腕をつかんだ。

「……どーしたの?」
「待って。ここは都会だよ」
「え、うん、そうだね」
「なるほど祐美、言いたいことは分かった」
「さすが夏華ちゃん」

夏華ちゃんと祐美の間で何かが通じ合ったらしい。理紗子ちゃんもなんだか分かったように頷いてるし、何だこれ。あたしと桜は置いてけぼり。何だこれ。

「都会と言えば、チャラ男に不良のたまり場!」
「別にそういうわけじゃないと思うけど……」
「女の子だけじゃ危ない」
「いつもと変わらないじゃない」
「桜シャラップ! と、いうわけで桜と祐美に男装を命じます!」
「え、何で!?」
「何ででも。ありすちゃん、ちょっと待ってて」
「あ、はーい分かった待ってるねー」
「ありすちゃん対応柔軟すぎない!? え、ねえ祐美ちゃん待ってちょっ腕痛い痛い痛いちぎれる!」

祐美は桜の腕を引っ張って更衣室へ入っていった。夏華ちゃんはトレーニングルームに入って、岳人!ジロー!制服借りるね!は!?何でだよ!何ででも!ほら桜の制服着ても良いから!誰が着るか馬鹿!などといったやり取りを向日くんと繰り広げていた。あたしはというと理紗子ちゃんと部誌を書いていて、理紗子ちゃんは突然くすりと笑った。

「どーしたのー?」
「ううん、夏華ちゃんは本当にありすちゃんたちのことがすきなんだなぁって思って」
「んん、それは、確かにそうなの、かなー?」
「うん、そうだよ」
「でもでも、夏華ちゃんは理紗子ちゃんのことが、いちばんすきなんじゃないかなーってあたしは思う!」

あたしがそう言うと理紗子ちゃんはすごく驚いた顔をしていた。でもそれから、とても綺麗に笑うから、あたしも微笑んでみせた。



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