大型ショッピングモールに併設されているスポーツショップに到着した私たちは、二手に分かれて買い出しすることになった。ガット?とか、よくわからないテニス用品は祐美ちゃんにお願いして、私とありすちゃんはタオルやドリンクの粉末、絆創膏などを買いに行く。別れ際に、祐美ちゃんにきちんとありすちゃんの彼氏を演じるように、ときつく言われた。どうやらこれはナンパ対策らしいのだが、ありすちゃんたちならまだしも、私をナンパする奇特な人はいないと思うなぁ。それに、ありすちゃんはナンパされても華麗に躱せそうなものだけど。念のためってことかな?

「桜、籠もってー」
「はいはい」

男装してるのに桜って名前は通じるのかなぁと苦笑いを浮かべて、ありすちゃんに手渡された籠を受け取る。そこに容赦なく大量の絆創膏を入れるあたりは流石というか、とりあえず重いです。包帯やらホワイトテープやら、消毒液(よりによって瓶タイプ)も入っているこの籠はとにかく重い。大事なことだから2回言ったけど、重い。すたすた先に行くありすちゃんの後をふらふらした足取りで追い、ふぅと息を吐くと、ありすちゃんの歩みが止まった。止まった、は少し可笑しいかな。訂正、誰かとぶつかってよろけた。

「きゃっ! す、すいません。大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。それにしてもキミ可愛いねー」
「……はい?」
「こんな可愛い子とぶつかって俺ってラッキー!」

……さ、さっそく絡まれてる!ナンパされてる!ありすちゃんが冷たい目で相手を見てる!え、これって、助けるべき!?ぐるぐるぐる、頭の中で色々考えていたけれど、結局は体が勝手に動いていた。床に置いていた籠を引っ掴んで、後ろから空いてる方の手でありすちゃんを抱きしめた。

「すいません。この子、俺のなんで」
「へ?」
「行こ」

きょとん、とした顔のありすちゃんの手を取ってその場を立ち去る。もう、なに、これ。自分でやっといてなんだけど、恥ずかしい!うわあああ絶対今顔真っ赤だよ……!

「桜ー?」
「ありすちゃん……なんか、ごめん」
「ええーなんで? 助けてくれたんでしょー?」
「う、一応……」
「ありがとー」

にこっと笑ってありすちゃんはお礼を言った。ど、どういたしまして。思わず頭を下げてそれに返すと、ありすちゃんはさらに笑った。可愛いなぁ。そりゃあナンパもされるよ。可愛いもん、この子。落ち着いた所でタオルのコーナーに行き、シンプルなデザインのものをいくつか購入。ちなみに、これは私たちのぶんだ。

「あ、いた」
「祐美だー。おつかれさまー」
「ん。ところで、何もされなかった?」
「えー? 大丈夫だよー。桜が守ってくれたしー」
「……は?」

何それ、どういうこと?眉間に皺を寄せて祐美ちゃんは私に問い詰めてくる。私はその気迫に押されて思わず2、3歩後退してしまった。うう、美人の不機嫌って怖い。

「ええっと、その、ありすちゃんがナンパされちゃって」
「どこのどいつに」
「名前までは分かんないよ……」
「外見は」
「オレンジ色の髪で、身長は理紗子ちゃんくらい」
「そう」

私に質問(尋問って呼んでも差し支えはなさそうなものだけれど)をし終えた祐美ちゃんは踵を返してすたすたと歩きだす。え、どこに行くの?同じように疑問を抱いたらしいありすちゃんが祐美ちゃんを呼び止めた。

「祐美、どーしたの?」
「ちょっと、始末してくる」
「誰を!?」
「そんなの、決まってる」

か、確実に殺る気だ!ありすちゃんをナンパした人今すぐ逃げて!ていうか、止めないと!

「そ、そこまでする必要はないんじゃない、かな?」
「どうして」

……聞かれても!だめなものはだめだよ!言い返そうとして口を開くも、あふれ出る殺気に為す術もなく私はうなだれた。どうしろと……。

「大丈夫だよー祐美。桜が助けてくれたし」
「……でも」
「今は祐美もいてくれるし。それに、早く帰らないとー部活終わっちゃう」

ありすちゃんの言葉に渋々といった様子ではあるものの頷いた祐美ちゃん。よ、よかったぁ。鶴の一声ならぬありすちゃんの一声。お会計済ませよーとありすちゃんが言ったのでレジに並び、お会計を済ませる。結構な量の荷物だけど、思っていたほど重くはなかった。それに安堵して、ようやく私たちは帰途に着いたのだった。途中、ありすちゃんの提案で、差し入れにとミスドに寄ったりしながら、ね。









 
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