レギュラーと準レギュラーはそれぞれのボトルに、平部員はひとつの大きなタンクにドリンクを作って入れる。結構大変作業だよね、これ。味が濃すぎないようにしないと!薄すぎるのもダメだけど!

「洗濯物干さなきゃー」
「ここはうちにまかせて! ドリンクはうちが完璧に仕上げる!」
「い、いいの……? 夏華ちゃんひとりになっちゃう、よ?」
「のーぷろぶれーむ!」

笑って答えると理紗子は安心したように笑って、じゃあよろしくねと言った。ありすは頑張ってねーと言って部室を出ていく。よし、がんばろ!岳人をぎゃふんと言わせねば!お気に入りの曲を口ずさみながらボトルに均等にドリンクを入れていく。キュッとふたを閉めて一息ついたと同時にガチャリとドアが開いた。そこにいたのは、洗濯物を干し終えた二人ではなく、岳人だった。

「あ、岳人だおつかれー! 今休憩っ?」
「おー。夏華もお疲れ!」

ドリンクもってっていーよ!と言うと岳人はサンキュと言って自分のボトルを取った。美味しいかなと岳人を見ていると、見すぎとボトルで額をこつんとやられた。地味に痛かった。

「あ、うめぇ」
「でしょでしょ! もっと褒めてくれていーよ!」
「いや何でだよ」

調子に乗ったらもう一回ボトルが額にきた。さっきより痛かった。チクショウ。でも美味いと言ってくれる岳人の笑顔にうちはもう大満足!

「よっし、持ってこ! 岳人も手伝ってー!」
「はあ!? しょーがねーなぁ優しい優しい岳人さまが手伝ってやるよ」
「きゃー! 岳人さまカッコイイー!」

そんなやりとりをしていると、部室に入ってきた宍戸が呆れた様子でうちらを見た。思いっきり、ばかじゃねーのって顔に書いてあった。チクショウ。


 ***


「あ」
「どーしたの?」

洗濯物を干し終わって部室に戻ろうとしたとき、視界の端に金色が見えた。よく見てみるとそれはジローくんで、どうやら寝ているらしかった。部活、さぼり?だよ、ね、どう見ても。

「ありすちゃん、先に部室戻ってて?」
「んん、分かったー。じゃー先に戻ってるねー」

ばいばーい、と手を振るありすちゃんに手を振り返して木陰の方へ。そこにはやっぱり寝ているジローくんがいた。なんでだろう。ジローくん、と控えめに声をかけても彼が起きる気配はない。軽く揺さぶってみても起きる気配はない。なんでこんなに熟睡してるの……。部活中なのに……授業中もそうだったけど!

「ジローくん……?」
「んー…………あれ、理紗子ちゃん?」

何度目かの応答でやっとジローくんは目を覚ました。長かった。体を起こして背伸びをしている彼は相当神経が図太いと思う、本当に。

「あ、そっかー理紗子ちゃんマネージャーだっけ?」
「う、うん。一応……」
「で、理紗子ちゃんは何でここにいるの?」
「ジローくんが、その、寝てたから?」

そっかそっか、とジローくんが笑う。それにつられて笑ってみる。よいしょとジローくんは立ち上がってもう一度背伸びをする。わたしもしゃがむ体勢から立ち上がる。ジローくんはこっちをじーっと見てくる。どうしたんだろう?

「理紗子ちゃん、背高いよね、いくつ?」
「え、えと、ひゃく、ななじゅういち……?」

ここ最近行った身体測定の結果を記憶から引っ張り出して答える。でか!とジローくんは驚いた後にうーんうーんと考えだした。対してわたしはちょっとショックだった。だって、身長大きいのちょっとコンプレックスだから。

「うん、よし! 理紗子ちゃん!」
「は、はいっ!?」
「待っててね!」

……何を?名前を呼ばれて身構えたけれど、ジローくんが言ってる意味はよく分からなかった。うーんと今度はわたしが考える番。でも、やっぱり答えは見つからない。どういう意味なの?と聞いても、内緒だC!とジローくんは楽しそうに笑うだけだった。









 
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