すべての授業が終わり、あとはHRを終えれば帰れるというところになった。どうやらこの学校の掃除は当番せいらしく、全員が掃除をするという時間が設けられてなかった。なんだか新鮮。カバンに教科書やらノートやらをつめて帰り支度をする。もちろん、置き勉することも忘れずに。
「ねぇ、ありすちゃん部活は決めたの?」
「うん。テニス部のマネージャー」
「そっか。人数少ないだろうけど、がんばってね」
ゆかりちゃんの話では、この時期はいろいろな部活で大会やコンクールなどがあるらしくマネージャーを希望する生徒が少ないらしい。うん、でもまあ5人いるしなんとかなるでしょー……多分だけど。
「跡部くんにはもう言ったの?」
「跡部くんに? なんで?」
「テニス部の部長だから。言っておいた方がいいんじゃないかなって」
「そ、そうなんだ……生徒会長に部長って跡部くんってすごいんだねー」
あたしがそう言うと、ゆかりちゃんはそうだねと笑った。そっかー跡部くんが部長なのかー……あ、これ、もしかして!思い立ったが吉日。先生がまだ来ていないことを確認して跡部くんの席の方へ。
「跡部くんっ」
文字がいっぱいの書類に目を通していたらしい跡部くんはあたしの呼び掛けに顔をあげて何か用かと問いかけた。
「あのね、恩返しをしにきたの」
「恩返し? ああ、昨日のか」
「うん。あたし含めて、転校生ともどもテニス部のマネージャーをやらせていただきます」
にこっと笑って言うと、跡部くんは一瞬驚いたような表情をして、それから笑い始めた。あれ、あたしそんなに変なこと言ったっけ。うーんと考えてみるけど思い当たる節は見つからない。
「おもしれぇ。やってもらおうじゃねーの」
アーン?と跡部くんはよくわからない発言をする。え、あーんって何?とりあえず、マネージャーをすることに了解はしてもらえたみたいだ。よかったよかったと一安心。
「来週の月曜日、テニスコートに来い。場所は分かるか?」
「うーん……ごめん、あんまり分からないや」
「わかった。迎えをよこしてやる」
ええええ迎えをよこすって!そこまでしてもらうのは悪いと思いながらも迎えをよこすぐらいなら跡部くんが案内してくれればいいのにと心の中で反発。だけどもちろんそんなことを跡部くんには言えなくて、分かったと答える。すると先生が入ってきて、席に着けと言われたので跡部くんの席から離れて自分の席へ戻る。来週の、月曜日。うーん、ちょっとだけ、不安がはびこってるかも。うんでも、だいじょーぶだ。うん、きっと、だいじょーぶ。だって、隣にはいつだって、桜たちがいてくれるのだから。
(そうして、少しづつ)
(私達は、彼らと巡り会っていったのです)
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