(怖いと決めつけていたらダメだから)
(少しでもいいよ、勇気をだして!)
「理紗子おはよー!」
「あ、ひかちゃん……うん、おはよう」
朝から元気なひかちゃんに対してわたしのテンションは急降下中だった。その原因は、わたしの隣の席には昨日ひかちゃんが話してくれた人が来るから。はあ、とため息をつくわたしに、ひかちゃんは首をかしげた。
「どしたの理紗子。元気ない?」
「え、そ、そう……?」
「うん、だって理紗子なんだかどんよりしてる!」
ど、どんより?ひかちゃんの言ってることはよく分からなかったけど、それでもわたしのことを心配してくれてることは分かる。それがなんだか嬉しくて、お礼を言ったらひかちゃんは目をぱちぱちさせた。
「うち、なんかした?」
「うん、ひかちゃんから元気もらったから、ありがとうって」
わたしがそう答えると、ひかちゃんは嬉しそうに笑った。その時ちょうどチャイムが鳴り、わたしたちは席につく。HRが始まって、1時限目が始まっても、まだ隣の席は空いたまま。
「宍戸宍戸、ジローは? 今日だよね、来るの?」
「そのはずだけどよ……まだ寝てるんじゃねぇ?」
「えー!? なんで連れて来てあげないの! それでもお世話係か!」
「だれが世話係だ!」
一時限目が終わったけれど、それでもまだ、隣の席にはだれもいない。ひかちゃんが宍戸くんを問い詰めているのは何でだろ?お世話係とか聞こえるけど……。
「あーあー! やっぱジローいないとつまんなーい!」
「ひ、ひかちゃん落ち着いて……?」
「もー宍戸のせいだ宍戸のばーか!」
「何で俺のせいなんだよ……」
「お世話係だからだ!」
「ちげーよ!」
そしてまたひかちゃんと宍戸くんと口論を始めてしまい、会話はループ状態。うーん、でも、本当にじろーくん?は来ない。いつになったら来るんだろ。カバンから次の授業の教科書を出して机の上に置く。すると、チャイムはわたしの行動を見計らったかのように鳴るのだった。
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