2階の真ん中辺りの教室、3年H組。そこが、ウチが今日から過ごすクラス。みんなとは、特にありすちゃんとはかなり離れてしまった。なんでウチだけこんなに遠いんだよ先生の馬鹿。

「それじゃあ、江藤さん自己紹介して」
「あ、はい。えっと、江藤祐美です。好きなことはゲームすることで嫌いなことは勉強です。よろしくお願いします」

うん、先生の前で勉強が嫌いとか勇気ある行動だ。自分に拍手を送りたい。先生は苦笑いしながらウチの席を教えてくれた。窓側の後ろから2番目。なんで1番後ろじゃないんだろう?ていうか、ウチの席の周り男子ばっかりだし。いや、別にいいんだけど女子の方が楽だったな、なんて。そんなことを考えながら席につこうとした、瞬間、ウチの席の後ろの人と目が合った。青っぽい黒髪がもさっとしてる、眼鏡をかけた男の子。カッコイイ顔立ちをしてると思う。けれど、視線はすぐに外された。なんだコイツ。ウチが席に座ると先生は授業は10分後からね、と言って教室を出ていった。その直後、後ろの席の男の子は教室を出て行った。え、本当になんなのアイツ。ざわざわと騒がしくなる教室。あちこちから、忍足くん行っちゃった、と女の子が話しているのが聞こえてくる。あいつ、忍足っていうのか。なんか仲良くなれる気しないなぁ。そんなことを考えていると、3人の女の子がこちらへやってきた。

「ねえねえ、江藤さんってどこから来たの?」
「あ、愛知から」
「えー地味に遠いね! あ、でもでも愛知ならうちのばーちゃん家に近いかもっ!!」
「え、そうなの?」
「うん、静岡だからねっ! てかてか柚菜ちん知らんかったんだね!」
「うん、まあちーちゃんのおばーちゃん家とか知ってても怖くない?」
「確かにー!」

話はいつの間にか2人の話題になりどんどん盛り上がっていく。気まずそうなウチに気付いた女の子が残りの二人の頭を軽くたたく。

「もうっ! 2人で盛り上がってたらだめでしょ!」
「あっそうだった! ごめんね江藤さん……ほら、ちーちゃんもっ」
「あう……ごめんね江藤さん。うち、ばかだからすぐ周り見えなくなっちゃうんだよー」

2人が謝ったのを見て、女の子は安心したように笑った。許してやってね、なんて言ってそれから、ウチの方を見てまた笑う。

「わたし、宇部ほたる。ほたるでいいよ、よろしくね」
「柚菜は鬼頭柚菜っていいます。柚菜って呼んでね」
「最後うちか! うちは川島千花! ちーちゃんでいーよ!」

ほたるちゃんに、柚菜ちゃんに、ちーちゃん。心の中で三人の名前を繰り返す。ほたるちゃんはしっかり者で、柚菜ちゃんは優しい子。それで、ちーちゃんは元気な子。

「江藤祐美です。祐美って呼んでくれると嬉しい、かな」

よろしく、と言うと三人は笑って応えてくれた。


(怖いことなんて、なんにもないよ)
(ほら、新しい世界が広がった!)



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