03 月光の下






不思議な少女と出会って数日が過ぎたある日。ナルトを悩ます用件が…後継ぎとして嫁をもらえと上役が騒いだのだ。更には、お前の嫁はもう決まっているとのこと。
其れには、驚きを隠せないナルトであったが沈黙の後一言。「わかったってばよ」と、二つ返事で返してしまった。
このことを以前から知らされていたシカマル。シカマルは何でナルトばっかりと頭を悩ます。


「なんで、上役の言いなりになってんだ?お前らしくない」

「…ありがとうだってばよ。だけど、」

「…」

「しかたないんだってば、」

「ナルト!!」


火影室を出たナルトを追いかけることできずシカマルは立ち尽くす。握りこんだ拳ぎりぎりと痛む。これが、現実だと


「なんで、ナルトばっかりなんだよ…」


◇◇◇

里を見下ろせる顔岩。俺は皆に幸せになってほしい。その思いに嘘偽りはない。しかし、家族に憧れていたのも真実。シカマルほどではないが人生なんて適当に昇格して、適当に恋愛して、結婚、子供が生まれて老後は穏やかに過ごすなんて甘い夢を見ていたと自傷気味に笑ってみる。
いろんなことがあった。ドベでいれる自分を隠すことは出来ないような事がたくさんあり今の俺がいる。九尾にサスケに暁にペイン、師匠であるエロ仙人の死や大切な仲間たちの死、オビトすべて終わったころには俺は火影になっていた。自分のしたことが結果火影の地位を手に入れたドベの俺なら手をあげて喜ぶだろう。“ドベの俺”なら。

そんなことを考えながら夜道を歩いていると感じた気配。


「誰だってば?」

「ナルト、さん?」


なまえだった。


「なまえ?」

「なんでこんな時間にナルトさんが?」

「なまえこそこんな夜中に危ないってばよ?」

「…はい」


困ったように笑うなまえが月光に照らされる。綺麗だと感じた。
ベンチに腰掛けるなまえの隣に俺も腰掛ける。ここは、エロ仙人が死んだときにイルカ先生とアイス食ったところだ。懐かしいななんて懐かしんでいると。


「ナルトさんもなにかあったんですか?」

「!」


本当になまえは不思議だ。嘘をつけない。


「はは、実はそうなんだってばよなまえもか?」

「まぁ、そんなところです」


なまえの頬には涙の跡があった。気づけば俺の手はなまえの頬に伸びていた。


「!」

「わり!」

「いえ、……」


らしくない。こんな気持ち…


「ナルトさん、」

「なんだってば?」

「よかったら、その…頭撫でてください」


昔の俺だったらどうするんだ?いつもならどうする?サクラちゃんならどうしてた?
俺はなまえを抱きしめて頭を撫でていた。


「生きるのって辛いですね」


か細い声で、しかしはっきりと聞こえたなまえの思い。

(しんどいってばよ…)

上手く返せる余裕はナルトにはなかった。