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幼なじみの女の子

 容姿端麗、成績優秀、運動神経も抜群だった。
 おまけに後輩には気さく接するし、目上の人間も敬うことができると人柄だって二重丸。ぱっと見なら、非のつけどころなんかない完璧超人だ。
 そんなあいつは、誰に何を褒められても「まだまだだよ」と否定する。普通なら謙遜だと思われるところだけど、こいつの場合は、そう、本気で思ってる。あいつには、上がいたから。
 姉というごくごく身近なところに最大の壁と障害があった。だからあいつはへりくだってるわけじゃなくて、本気で自分はまだまだなんだと、有能でも何でもないと思って、むしろ劣等感で苦しんでいる。
 天才ゆえの苦悩というわけでもない。別にあいつは天才じゃないから。人よりも飲み込みが早くて、そして人よりも努力家で。小さな積み重ねの上に、あいつは立って、うつむいてる。前を見るのを、恐れてる。
 他人の計り知れないところで、あいつはずっと、
(……こんなんじゃ、放っとくことなんかできないよなあ)
 けど俺は、こいつのこんなにも弱くて脆いところを、たまらなく愛しく思うんだよ。
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