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気持ちのピース

「かっる……」
 かくん、と足元をすくわれる心地がしたと思うと、瞬きのあいだに現れたのはどこか不服そうな天ちゃんの顔。いわゆる至近距離、目の前、少し身を乗り出せば簡単に唇が触れられそうなところにある現代の天使の表情は渋い。なあに、つとめて冷静にそう訊ねれば天ちゃんは小さなため息まじりに言った。
「体重。軽すぎない? もう少し脂肪もつけといたほうがいいと思うけど」
「えぇー……そうかなあ。でもテレビに出る以上はこれくらいが限度、」
「そうじゃなくて。見た目よりも体が心配」
 細すぎるとかえって体調崩すでしょ、そうこともなげに言ってのける天ちゃんは私の手を肩にまわさせて歩き出す。ちょっと待って、はやい、ねえ、しどろもどろの制止など耳にも入っていないのだろう、あっという間に私は自室まで連れていかれてしまった。
「クマもひどいね。最近ハードだったし寝てないんでしょう」
「バッ、ば、バレ……」
「甘く見ないで」
 ころりとベッドに寝かされたと思えば優しく布団をかけられてあまつさえ子守唄まで歌われる始末。リズムよく背中を叩く手つきはおそらく幼少期に培われたものなのだろう、私の眠気を引き出すのにそう時間はかからなかった。
 今日はせっかくのオフなのに。2人のオフが重なるなんて滅多にないことだったから、今日は目いっぱい天ちゃんと過ごそうと思っていたのに。悔しい、寝たくない、けれど睡魔は容赦なく私を攻め立てては微睡みに連れて行こうとするし、ほかでもない天ちゃんが私を寝かしつけようとしているのだからたまらない。
 いやだ、なんて子供じみた駄々をこねれば、ゆっくりと手を握られる。大丈夫だよ、ここにいるよ、そんな思いやりと優しさが言葉の外から伝わってきた気がした。
「おやすみ、なまえさん」
 意識を手放す直前に、私の頬に触れたその感触が何だったのか。気づくためのピースは、まだここにはない。


貴方は萌えが足りないと感じたら『軽々とお姫様抱っこしてくれる×××』をかいてみましょう。幸せにしてあげてください。
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