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君がいないと

「そんなつもりじゃなかった」なんて犯罪者の常套句が、よもやこの口から出そうになるだなんて思ってもみなかった。金曜日から土曜日を跨いだ深夜一時のこと、暗闇のなかぼんやりと光るモニターを前に至は頭を抱えている。想いが溢れて壊れそうだと思った。傍にいない今を「違和感」と捉えてしまった。お姉ちゃんと遊びに行くから、と言って泊まりにこれない話を聞いたときは素直に祝福したはずだ。かつてはあんなに険悪であった姉妹仲が、二人で出かけられるくらいには改善されている。よかったな、と頭を撫でれば照れ臭そうに笑っていた。そんな彼女が愛おしいと思ったのは事実で、喜ばしいことであって、何にも嘘や偽りはなかった。それでもこの胸は騒いで仕方なくて、今の自分は嵐のように心中を乱している。淋しいのだ。週末は泊まりがけでゲーム三昧の夜を過ごしていた、その習慣が彼女の姉のおかげで乱れた。体調不良だとか、学校行事とかやむを得ない理由ではなくて、自分よりも見知った他人が優先された今がひどく腹立たしくて、悔しい。
「……バッカみてぇ」
 どうやら自分は思ったよりも彼女に惚れ込んでいるようだ。長らく慣れ親しんだはずの一人の夜。ささやかな安らぎのひとときだったはずなのに、誰もいない一人部屋に苛立ちを覚えている自分がなんだかひどく惨めに思えて、闇の中に力のない自嘲が溶けた。

20180519
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